新規事業や売れる仕組みづくりは、社長・起業家のフルコミット案件にすべき。なぜ現場社員に任せてもうまくいかないのか。

私たち社長・起業家という職業選択をした人は、「社会にもっと役に立つには。もっと喜んでもらうには。」と、24時間365日頭のどこかで考えています。

「好きで好きでたまらないから」という人もいれば、「考えざるを得ないから」という人もいるでしょう。

創業者社長の場合は前者、2代目3代目の場合は後者が多い印象です。

いずれにしても、常日頃からあれこれ想像やアイデアを巡らせます。

そして、その中のごくごく一部が、「これだ!」と覚醒するがごとく、真っ暗な中に一筋の光がごとく、創造と実行の段階へ進みます。

その先には、想像やアイデアが現実化され、社会や人々により一層喜ばれ、社長・起業家自身の成功や生き甲斐へと繋がっていきます。

■3代目社長の焦燥

昨日、クライアントの一社である印刷会社の社長からこっそり相談を受けました。

「なかなか社員に話が通じない。動きが遅い。指示待ち、言われた最低限のことだけを作業としてこなすだけ。」

既存の印刷事業への先行きの危機感がますます高くなっていて、新規事業や新商品サービスの収益化を急ぎたいところなんです。

しかし、現場実行を任せている社員の皆さんのスピードが遅く見えるだけでなく、意欲も感じられないとのこと。かなり焦っているというか、苛立っている様子でした。

確かに、私たちも売れる仕組みづくりをサポートしている立場ですが、他社では2〜3時間でできることに、彼の印刷会社では2〜3週間も時間がかかっています。

中小企業や新規ビジネスは、スピード、スピード、スピード。日本電産・永守重信会長もおっしゃっていましたよね。

■「違う」を理解する

個人差はあれど、社長・起業家と現場社員スタッフの間の隔たりというか、危機意識の違い、感覚の違い、見ている景色の違いは、どんな会社でもあるでしょう。

異なる人が集まって、一緒に仕事をしているのですから、意識や感覚が完全一致というのは、なかなかに一筋縄ではいかないですね。

20年前のベストセラー本『男は火星から、女は金星からやってきた』『話を聞かない男、地図が読めない女』みたいなものです。

これは、誰が良い悪いとか、上か下か、という問題ではありません。単純に「違う」というだけのことです。

■不都合な真実

その前提に立てば、新規事業や売れる仕組みづくりは、社長・起業家の仕事なんです。フルコミット案件です。

ゼロの状態からいきなり現場に任せれば、動きは遅く、成功確率も極めて低くなるでしょう。というか、成功・失敗の段階にすら至らないこともあるでしょう。

現場社員の中で、事業家意識があり、豊富な経験と実行能力を持ち合わせた人がいるなら話は別です。でも、ほとんどの会社では、そんな人材は社内にほぼいません。

自分の人生や生き様のすべてをかけて、責任やリスクを承知の上で、夢やビジョン、ビジネスアイデアの現実化のために、全集中させて道を拓くという経験をした人は、あなた以外に一人でも社内にいるでしょうか?

■社長の仕事、現場社員の仕事

大多数の現場社員の皆さんには、既存事業、既存のビジネス活動の枠組みの中で、どうすればもっと成果が上がるか、改善できるか、お客様へ喜ばれるか、を考えてもらいましょう。

一方、新規事業や売れる仕組みづくりは、社長・起業家のあなたに加えて、社内でも選りすぐりのメンバー1名だけ、計2名の小さなチームを組んで、全速力で進めましょう。

ゼロの状態から現場社員へ良かれと思って任せても、彼らも途方に暮れてしまいがちです。

社長・起業家のあなたなら、無茶振りされる方が燃えるかもしれませんが、多くの現場社員は「違う」感覚の持ち主なんです。

一番難しい「0→1の創造」は社長・起業家の仕事。「1→2〜無限大」に成長・安定維持させるのは、現場社員の仕事。

たとえば、このように区別すると良いのではと私は考えていますが、あなたはどう思いますか?

冒頭に話したクライアントの印刷会社の社長は、自分はあまりタッチせずに、いきなり現場に任せようとしていました。しかも、3つ4つの新規事業や売れる仕組みづくりを同時に。

今後は社長フルコミット案件に戻して、選択と集中をつくり、私たちと全速力で走ります。