採用弱者が勝つための求人広告戦略:地方企業・中小企業が最小コストで欲しい人材を採用する方法/株式会社トランスヒューマン 代表取締役 渡邉崇

多くの中小企業や地方企業が抱える悩みのひとつが、「求人広告を出しても有効な応募が来ない」という問題です。

大手求人媒体で新卒採用を行ってもエントリーはわずか、中途採用向け転職サイトでも反応が薄い。ようやく面接に進んだ応募者も、内定を出すと辞退されてしまう。こうした状況は珍しくありません。

原因のひとつは、採用手法が「就職強者」向けに設計されている点です。

就職強者とは、就職活動や転職活動に積極的で、自己分析や業界研究ができており、志望動機を明確に語れる層を指します。

この層に対しては、大手就職サイトや会社説明会でのアプローチが有効ですが、地方企業や知名度の低い中小企業の場合、そもそもこうした層が集まりません。

結果として、求人広告の費用をかけても応募ゼロ、または条件不一致による早期離職という事態に陥るのです。

就職弱者を採用ターゲットにする発想

一方で、「就職弱者」と呼ばれる層が存在します。これは能力が低いという意味ではなく、転職や就職に対する動き方を知らない人、ポテンシャルに気づいていない人を指します。

例えば、転職意欲はあるが情報収集方法がわからない、異業種への転職を考えたことがない、スキルはあるのに自己評価が低く自信を持てない、といった人たちです。

この層に刺さる採用戦略を設計すれば、競合が少なく、ミスマッチの少ない採用が可能になります。

ポイントは、応募前から「自分にもできそう」「この会社なら可能性が広がりそう」という気づきを与えることです。

求人広告や会社説明会の内容は、条件提示や会社概要の説明だけでは不十分です。応募者の潜在的な不安や興味に応えるストーリーや事例を提示し、行動のきっかけを作る必要があります。

ハローワークを有効活用する方法

コストをかけずに求人を出す方法として、ハローワークは依然として有効な手段です。しかし、求人票の書き方を工夫しなければ埋もれてしまいます。

一般的な求人票は職種・待遇・勤務時間などの事務的な情報だけで構成されがちですが、それだけでは魅力が伝わりません。

求める人物像の欄に、現在活躍している社員の前職や特徴を具体的に記載するだけでも効果が変わります。

「前職はアパレル販売員」「元は神社の巫女」といった異業種出身者が活躍している事例を載せれば、応募をためらっている人に安心感を与えられます。

さらに、困っていることや課題を率直に書くことで、問題解決意欲のある人材を引き寄せることもできます。

地域密着型メディアでの差別化

地方企業の場合、地元フリーペーパーや地域限定の求人サイトを活用するのも有効です。ただし、掲載原稿の多くは似たり寄ったりで、特徴が埋もれがちです。

目を引く写真やキャッチコピーを大胆に使い、視覚的に差別化することで応募率を上げられます。

また、仕事内容や条件だけでなく、「地域で働く魅力」や「生活との両立のしやすさ」など、地元だからこその価値を盛り込むことが重要です。

SNS・動画の活用ポイント

最近ではTikTokやYouTubeなどSNSを使った採用活動も注目されています。しかし、多くの企業が失敗するのは「情報を詰め込みすぎる」ことです。

動画で1から10まで会社概要や待遇を説明してしまうと、視聴者は飽きて離脱します。

効果的なのは、「掴み」に特化した短いコンテンツです。

「面白い社員の紹介」「仕事中のユニークなシーン」「会社の一番の強み」など、1つの魅力を短時間で見せることで興味を引き、詳細は次のステップで見てもらう流れにします。

この方式なら、動画制作コストを抑えつつ高いエンゲージメントを得られます。

採用説明会の設計と弱者層への配慮

就職弱者の多くは「自分でもやれるだろうか」という不安を抱えています。

説明会では仕事内容や条件だけでなく、「短時間勤務でも活躍できる事例」「未経験から成長した社員の実例」など、心理的ハードルを下げるコンテンツを盛り込むことが重要です。

また、質疑応答の時間を十分に取り、個別の事情や疑問に直接答えることで信頼感が高まります。

面接は減点方式ではなく加点方式で

就職弱者層の面接は、減点方式ではなく加点方式で評価するのが効果的です。欠点を探すのではなく、自社にフィットする要素を探します。

「社風に合う性格」「経験は浅いが学習意欲が高い」「異業種で培った接客スキルが活かせる」など、活躍の可能性を見出す視点が必要です。

そのためには、応募者のタイプごとに質問項目を事前に準備し、面接官が一貫した基準で評価できるようにします。

妥協すべき点とすべきでない点

採用では、妥協してもいい条件と、絶対に譲れない条件を明確にすることが重要です。

例えばスキル不足は入社後の研修で補える場合がありますが、価値観や勤務姿勢が大きくずれている場合は長期的な定着が難しくなります。

一方で、特定のスキルや資格が事業に不可欠であれば、その条件は優先的に確保し、入社後のサポート体制を整えて活躍を促すべきです。

採用パートナー選びの注意点

求人広告代理店や採用支援会社を選ぶ際は、原稿制作だけで終わらず、なぜその人材が必要なのかという採用戦略の上流部分から伴走してくれるかどうかを確認することが大切です。

単なる広告出稿代行では、結果が出なかったときに改善提案がなく、費用だけがかかってしまいます。

採用弱者向けの採用に理解があり、応募者層の特性に合わせた媒体選定や原稿作成ができる会社を選ぶことで、失敗を減らせます。

まとめ

地方企業や中小企業が求人広告で成果を出すには、就職強者ではなく就職弱者に刺さる戦略が不可欠です。

ハローワークや地域メディア、SNS動画など低コストで効果的な手段を組み合わせ、応募前から「自分にもできそう」と感じさせる仕掛けを作ることが鍵となります。

面接や説明会では加点方式の評価を導入し、応募者の可能性を引き出す姿勢を持つことで、採用の質と定着率は飛躍的に向上します。

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