不人気業界・人材不足時代の採用課題と突破口/株式会社foredge 代表取締役 古賀利幸

近年、不人気業界とされる業種での採用はますます難易度が高まっています。

不動産営業、物流ドライバー、飲食店スタッフ、アパレル販売員などは、慢性的な人材不足に悩まされ、求人を出しても応募が集まらないという声が後を絶ちません。

その背景には、労働条件や業界イメージによる敬遠、転職のしやすさによる求職者の選択肢拡大、そして大手企業との競争激化があります。

株式会社foredge代表・古賀利幸氏によると、人気業界に比べて不人気業界は、そもそも候補者プールが小さい上、同じ業界内でも条件や働き方を柔軟に変えている企業が採用で優位に立っているといいます。

営業ノルマや長時間労働といったネガティブな要素を緩和し、ホワイトな職場環境を打ち出すことで、大手企業はある程度採用を維持していますが、それでも応募数はギリギリ。

対策を怠れば、求人効果は右肩下がりになるのが現状です。

働き方改革と採用ブランディングの連動

採用活動の第一歩は求人広告ではなく、会社の働き方そのものを見直すことです。条件改善だけでなく、それを採用ブランディングに直結させる戦略が重要です。

例えば、不動産業界であれば営業ノルマの廃止や残業時間の削減を行い、「ホワイトな不動産営業」という新しいポジションを明確に発信します。

飲食業界であれば営業時間やシフト制度の柔軟化を行い、ワークライフバランスを重視する求職者層にアピールします。

古賀氏が支援したある小売業企業では、全国1000店舗以上を運営する中で、「店舗限定正社員制度」を導入しました。

これは全国転勤を伴う総合職ではなく、勤務地を固定した正社員枠を新設するものです。

特に主婦や地域に根差して働きたい層から好評を得て、従来アルバイト止まりだった人材が正社員として定着する結果につながりました。

このように、制度変更を単なる条件改善で終わらせず、採用市場での差別化要素として活用することが不可欠です。

採用予算の集中投下という発想

中小企業の採用課題の一つは、限られた予算の分散による効果の薄まりです。古賀氏が手掛けた有楽町の飲食店採用では、年間予算を12分割して求人媒体に出稿しても応募がほぼゼロという状況でした。

そこで、半年分の予算を一度に集中投下し、短期間で大量の応募を確保する戦略に切り替えたところ、応募数が劇的に増加。採用選考の幅が広がり、結果的に定着率も向上しました。

このケースが示すのは、「限られた資源は一点突破に使うべき」という採用戦略の本質です。

特に不人気業界では、予算の薄く広い使い方よりも、短期間で採用市場に存在感を示す集中的アプローチの方が効果的です。

オフライン接点による採用チャネル開拓

近年はWeb求人媒体やSNS広告が主流ですが、知名度が低い企業や不人気業界ではオンラインだけでは応募が集まらないケースもあります。

そのような場合、就職・転職イベントや合同説明会といったオフラインの場に出展することで、対面での魅力発信が可能になります。

イベントブースでは、求人広告では伝わりにくい社風や働く人の雰囲気を直接体験してもらえるため、「こんな会社があったんだ」という新しい発見を求職者に与えられます。

古賀氏が支援したある企業では、競合に求人広告で勝てなかったため、採用イベントに特化した活動を実施。その結果、直接説明を受けた求職者の応募率が大幅に向上しました。

不人気業界であっても、リアルな場での接触は求職者の心理的ハードルを下げる強力な手段となります。

中小企業でもできる採用改善の第一歩

「うちは店舗数も少ないし、予算も限られている」と諦める前に、中小企業でもできる採用改善策は数多く存在します。

まずは既存社員からのリファラル採用(社員紹介制度)です。現場で活躍している社員の友人や知人は、企業文化や業務内容との相性が良いことが多く、定着率も高い傾向があります。

また、紹介過程で職場環境や条件の改善点が浮き彫りになるため、求人改善のヒントにもなります。

さらに、自社のホームページやSNSを活用した採用広報も有効です。求人媒体に依存せず、自社発信で求職者と接点を持てるため、ブランディング効果も期待できます。

特に中途採用市場では、新卒採用ほど業界人気が優先されないため、条件や働き方次第で不人気業界でも十分に採用競争力を持つことが可能です。

採用戦略は「信念」と「覚悟」が試される領域

不人気業界・中小企業の採用成功には、戦術だけでなく経営者や採用責任者の信念と覚悟が不可欠です。

半年分の予算を集中投下する決断や、新制度導入のための社内調整、イベント出展に伴う人的リソースの確保などは、リスクと負担を伴います。

しかし、その投資を「必ず採用を成功させる」という信念で実行した企業こそが成果を出しています。

古賀氏は「時には採用責任者よりも、自分の方が絶対に採用を成功させるという強い気持ちで臨んできた」と語ります。

採用市場が厳しさを増す今、不人気業界であっても諦めず、戦略的かつ情熱を持った取り組みこそが突破口になります。

まとめ:不人気業界でも採用は可能

人材不足が深刻化する中、不人気業界や知名度の低い中小企業でも、採用を成功させる方法は確かに存在します。

働き方の見直しと採用ブランディングの連動、予算の集中投下、オフラインイベント活用、リファラル採用、自社発信強化など、実践可能な戦略は多岐にわたります。

重要なのは、「人が来ない業界だから仕方ない」と思考停止せず、自社に合った突破口を見つけ、覚悟を持ってやり切ることです。

採用は待ちの姿勢ではなく、攻めの姿勢でこそ成果が出ます。不人気業界の採用課題に悩む企業こそ、今こそ戦略的な一手を打つべきタイミングです。

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