テスラの仮想発電所計画に思う、ビジネス戦略やアイデア発想3つのヒント。

米テスラが、家庭用蓄電池「パワーウォール」を活用して、日本で仮想発電所向け蓄電池に本格参入します。

仮想発電所は、戸建などに設置した太陽光パネルや蓄電池といった電力設備を制御して、1つの発電所のように運用する仕組みです。

電力が余っている時間帯には各家庭に設置した太陽光パネルから蓄電池に電気をため、足りない時間帯には蓄電池から電力網に電力を供給するようにコントロールすることで、地域全体で電力需給の最適化を目指します。

沖縄宮古島で試験運用中

米テスラは、各国・各地域のパートナー事業者に、仮想発電所の運営を任せています。すでに米国やオーストラリア、英国などで同様のサービスを展開しています。

日本でも2021年より、沖縄電力や地元事業者と連携し、宮古島で仮想発電所を試験運用してきました。2024年以降に沖縄全域、将来的には本州にも展開する計画とのこと。

仮想発電所の運営を担う地元事業者が、太陽光パネルや蓄電池をテスラから購入し、家庭に無償で設置し、沖縄電力の指示に応じて、需要や供給を調整する役目を担います。

蓄電池の空き容量などのデータは、テスラが保有するクラウドサーバーで管理し、地元事業者はスマートメーターや太陽光発電量などのデータとテスラのデータを連携させて、効率的な仮想発電所の運営に生かす仕組みです。

私たちのビジネスへ応用するヒント

私がテスラの仮想発電所のニュースを見た時に、私たちのビジネスやアイデア発想のヒントという意味で、次の3つの事を思いました。

(1)調整役・最適化を担う

たとえば、フリーランス人材活用は成長市場ですが、企業にとって、自社に必要なフリーランス一人ひとりを見つけたり、段取りや要員変更したりするのは、手間ですよね。「それ、代わりにやりましょうか?」というのは、簡単に成立しやすいと思います。

たとえば、仮に沖縄電力にとって、個別の蓄電池の制御や管理ができない・面倒・状況把握しきれないとして、地元事業者がテスラのパワーウォール活用を条件として「代わりやりますよ?」というのは、沖縄電力にとって大変ありがたい話ですよね。

多数の個人・小規模・部分・断片を束ねる仕組みをつくり、誰かの代わりに管理・調整・最適化してあげるモデルは、すでにいくらでもありますし、新規事業としても成立させやすいモデルだと思います。

仮想発電所の運営については、あっちこっちと訪問不要で、おそらくフルリモートでのデータ管理やシステム上での調整・最適化で成立させられてしまう点が、素晴らしいですね。

(2)足りないなら余っているを探せばいい

今年の夏も電力不足が話題です。太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの出力不安定など、電力の安定供給コントロールも簡単ではありませんね。

日本の事業者を調べてみると、パワーウォール蓄電池は、どちらかというと、災害時の停電対策としての安心を売ってきた側面が強いようです。

その結果、アプリ等を使って蓄電・売電のコントロールができますよとPRしても、各家庭は電力を溜め込む方が多かったんじゃないかと思うんです。

溜め込みに偏りがちな電力を、仮想発電所の仕組みにより地域全体で最適化し、電力供給を安定化させようという狙いではないでしょうか。

これは、貯金と投資の話と同じですよね。日本人は貯金、貯金と貯める意識が強いですよね。でも、日本全体の経済成長やお金の循環を考える意味でも、投資にまわしてほしい。

たとえば、自社にとってリソース不足がある時、すでにリソースを持っている他社と組めば、一瞬で問題は解決しますよね?自社でぜんぶ自力自前で揃えようとする必要はないんです。

社会全体の仕組みについても、”電力が足りない”ならば、”電力が余っている”を探せば、ビジネスチャンスや解決策の方向性が見えてくるかもしれません。

(3)海外や異業種の事例に目を向ける

仮想発電所は沖縄宮古島が世界初ではありません。すでに、米国やオーストラリア、英国などで展開されています。

カリフォルニア州では、7/15史上初めて、蓄電池経由の電力供給が原子力発電所経由を上回ったそうです。

日本国内だけ、同業界や直接競合だけを見るのではなく、何か解決すべき課題やアイデアの着想が欲しい時、あえて自国や自社、自業界から遠い、海外や異業種に目を向ければ、ヒントが見つかるかもしれませんね。