【知らないと損】お客様が離れていく“嫌われる営業”の行動パターンとは?あなたの良かれが逆効果かも.../サイレントセールスの専門家 渡瀬謙 × BtoB売れる仕組みの専門家 村上智彦
「こんなに一生懸命やっているのに、なぜかお客様が離れていく……。」
そんな経験はありませんか?「自分では“良かれ”と思ってやっているのに、それがお客様から見ると逆効果になってしまう」――セールスの世界では、これほど悲しいすれ違いはありません。
実は、ちょっとした言動や態度の差が、信頼を得るか嫌われてしまうかを大きく左右します。もし「もう少しうまくやれるはずなのに……」と感じているなら、ぜひ最後まで読んでみてください。あなたが陥っているかもしれない“逆効果”のポイントと、その解決策を掘り下げていきます。
演技をするセールスパーソンが抱える“苦しさ”
営業を始めたばかりの頃、多くの人は「セールスの正解像」とでも言うべき、テンプレートのようなスタイルに憧れます。満面の笑顔、大きなジェスチャー、巧みな話術――そうした“ザ・営業マン”を演じようとするあまり、結果的に不自然さが目立ってしまい、お客様から敬遠されてしまうケースが少なくありません。
渡瀬さんは営業職に就いたばかりの頃、「営業職といえばこういう振る舞いが正解だろう」と思い込み、身振り手振りを派手にして、いつも笑顔を絶やさず、まるで舞台俳優のようにセリフ回しを練習していたといいます。しかし、そうした「演技」はお客様にも伝わってしまい、かえって距離を置かれてしまう結果につながりました。なぜなら、お客様は本来の人柄や“素”の部分を見抜こうとしているからです。自分が自然体でいられないまま営業を続けても、お客様との間に本当の信頼関係は生まれにくいのです。
本人は「良かれと思って」やっているのに、その努力が裏目に出る――実は営業の現場では、こうしたミスマッチが頻繁に起こります。「もっと自然に振る舞いたい」とは思いつつも、どうすれば自然体を保てるのか分からない。結果、演じるほどに自分も苦しくなり、お客様にもぎこちなさが伝わる。そんな悪循環から抜け出せないセールスパーソンは決して少なくありません。
良かれと思っていても逆効果…ありがちな3つの落とし穴
ここからは、具体的に「良かれと思ってやっているのに、実は逆効果」という営業上のミスを3つ取り上げます。自分の行動を振り返りながら読んでみてください。もし当てはまるものがあれば、今日から意識を変えるだけで状況が良い方向へ動き出すかもしれません。
1. 安易な値引きで信用を失う
営業の現場で最も多いのが「安易な値引き」です。お客様は値段が下がること自体を否定するわけではありません。むしろ歓迎する人が多いのは当然です。しかし、「はい、では○○円値引きします」と、あまりにも簡単に金額を下げてしまうと、お客様の心にはこんな疑問が生まれます。
「最初に提示した価格は何だったの? もしかして最初から騙すつもりだった?」
値段をすぐ下げる行為は、売り手自身の商品価値を下げることにもなりかねません。もちろん、適正な理由がある割引なら問題ありません。例えば「3カ月分まとめてご契約いただけるなら○○円お値引きできます」など、具体的な条件とセットになっている値引きです。これならばお客様も「なるほど、たくさん買うからお得になるんだね」と納得しやすい。
一方で、言われるがまますぐに「じゃあ○○円引きます」と持ちかけると、「裏で何か誤魔化してない?」「もともとボッタクリ価格だったの?」と深読みされる危険性があります。値引きは“信頼”を高めるどころか“疑念”を生む可能性がある、扱いの難しいツールなのです。
2.自分都合でお客様の時間を奪う
営業職にとって、目標や締め日のプレッシャーは大きな問題です。「今月のノルマを達成したい」「上司に報告してしまった手前、どうしても今月中に決めたい」――そんな事情があれば、どうにか早く契約を取りたいと思ってしまうのは当然でしょう。
しかし、そこでお客様の都合を無視した強引なアプローチをすると、途端に関係性が悪化します。たとえば、お客様が「商品は気に入ってるから買うよ。でも今は忙しくて詳しい話を聞く時間がないから来月にしてほしい」と言っているのに、「今月なんとか決めてください」としつこく時間を求めるケースです。
一見「お客様のために早く導入してあげたい」という言い訳をするかもしれませんが、大半の場合は自分の成績や上司へのメンツが優先されています。そうした“自分都合”は意外なくらい簡単に見透かされます。お客様は「結局は自分の数字のために動いているんでしょ」と感じてしまうでしょう。私たちが思う以上に、お客様は営業側の本音に敏感です。こうした押し付けがましさを感じると、「じゃあいいや」と後回しにされるどころか、最悪の場合は完全に断られることもあります。
3.「分かったふり」で本音にたどり着けない
お客様との会話をスムーズに進めようとして、聞き手である営業側が「分かったふり」をしてしまうこともよくあります。「はい、はい、そうですよね」「それ分かります」と共感している“つもり”になり、実際には理解していないのに話を進めてしまう。
その場では会話が円滑に進んだように見えるかもしれません。しかし、本当の意味でお客様が何を望んでいるのか、どんな不安を抱えているのかは“分かったふり”では絶対に引き出せません。さらに厄介なのは、お客様にとって重要なポイントをスルーしてしまうと、「この人、本当に私の話を聞いていたのかな?」という不信感を呼び起こすことです。
セールスパーソンが考えている以上に、お客様は細かい部分から「あなたの本気度」「理解度」を読み取ろうとしています。「あまり突っ込まないでほしいな」と思う話題こそ大事だったりするものです。そこに誠実に向き合わないと、いくら上手に話をまとめても「なんだか納得できない」と最後に断られるケースが出てきます。お客様が断るとき、必ずしも「本当の理由」を言ってくれるわけではありません。「今回は予算がないので……」「他社の方が条件良かったので……」など建前を並べるだけ。それが実は「あなたがうわべだけの会話しかしてくれなかったから」という場合だって大いにあり得ます。
テクニックの“なぞり”はすぐ見抜かれる
営業の手法を学ぼうと、セミナーや書籍で「イエスを引き出す質問術」「同意を得るための会話フレーム」などを学んだ経験はありませんか? もちろん、質問の仕方や話の進め方に一定のセオリーは存在しますし、学ぶ意義も大いにあるでしょう。
しかし、それをマニュアル通りに“なぞる”だけで終わってしまうと、お客様に「はいはい、またあの手口ね」と見抜かれて逆効果になりかねません。特に近年は、ネット上でも無数の営業テクニックが語られています。お客様側が「こういう言い回しは売るための誘導だな」と事前に知っている可能性も高いのです。
むしろ真に大切なのは「お客様が何を考え、どんな課題に直面しているのか」について丁寧に聞き出す姿勢です。あくまで相手の本音や事情を自分の頭で理解しようとする。そのための“問いかけ”こそが真髄であり、テクニックはその補助的な役割でしかありません。誘導尋問めいた質問を多用して「こちらの望む回答」ばかりを狙っていると、いつか必ずボロが出ます。
嘘をつかない・分からないことは分からないと言う
自分の“格好の悪さ”を隠そうとして、つい誤魔化したり曖昧に返事をしてしまうことは、誰にでもあるかもしれません。特に営業では「お客様の質問に即答できなければ、信頼を失うのではないか」と怖くなる場面も多いでしょう。
しかし実は、「分かりません」と正直に伝えてから、改めて調べて正確な情報を連絡するほうが、よほど信頼を得やすいのです。中途半端に「多分大丈夫だと思いますよ」などと答えると、お客様は「本当に? なんだかふわふわしてるな」と感じ、不安が増すだけです。
営業においては「すぐ答えられないとダメ」というプレッシャーが根強いですが、実際にお客様が求めているのは「誠実さ」と「的確さ」です。怪しい知識を並べるより、最初は「今は即答できないので、きちんと調べてご連絡します」と言ったほうがはるかに好印象を与えます。少なくとも「この人は適当にその場を繕う人ではないんだな」と伝わるからです。
自然体でいること=あなたの一番の武器
「お客様に嫌われないためにはどうすればいいんだろう?」という問いに対して、実はシンプルな答えがあります。
- 嘘をつかない
- 分からないことは分からないと言う
- 相手の時間と立場を尊重する
- 変にテクニックに頼りすぎず、自然体で臨む
この4つを徹底するだけで、セールスパーソンの印象は大きく変わります。なぜなら、自然体でいられると自分自身が楽になりますし、その“楽な空気感”がお客様にも伝わるからです。演技で魅せるのではなく、本来の自分を活かすほうが、営業数字が伸びるケースは珍しくありません。
営業に慣れないうちは、自分のマイナス面や不得意な部分を隠すことにばかり意識が向きがちかもしれません。しかし思い切って「自分はこんなキャラで、まだ知らないことも多いです。でも一つひとつ確認して誠実にお答えしたい」と開示したところ、むしろお客様から親近感を持ってもらえるようになったのです。お客様が安心して話してくれるようになると、自然とニーズが引き出せるので契約につながりやすくなります。
まとめ:まずは「自分を許す」ことから始めよう
最初は「嫌われないように」「信用してもらえるように」と気負うあまり、背伸びした振る舞いをしてしまう人も多いでしょう。けれども実際には、無理に演技するほどお客様との心の距離が広がってしまうものです。
だからこそ大切なのは、肩肘張らずに自分らしさを出すこと。そして、すでに紹介したような「安易な値引き」や「自分都合で時間を奪う」「分かったふりをする」といったNG行動を意識して避けることです。もし思い当たるフシがあるなら、次回の商談から少しでも改善してみましょう。
営業が苦しいと感じるときは、得てして「自分はもっと凄い営業マンにならなくちゃいけない」という思い込みが強いことが多いです。でも、人間関係において強がりや演技が裏目に出るのは、プライベートでもビジネスでも同じ。大切なのは「そのままの自分でいいんだ」と自分を許す姿勢です。
自分が自然体でいると、お客様も緊張を解いてくれます。自分が嘘をつかなければ、お客様も安心して本音を話してくれます。テクニックにこだわって相手を誘導するより、自分を解放し、相手を大切にする姿勢こそが、長期的な信頼と売上の向上をもたらしてくれるでしょう。
本当にお客様に好かれて長く付き合える営業パーソンになりたいなら、まずは無理な演技や取り繕いをやめてみる。それが、信頼を生み出す第一歩です。あなたの笑顔や言葉が「本物」になるほど、お客様との間に築かれる絆は強くなり、結果として数字もついてくるはずです。ぜひ、今日から実践してみてください。