【営業社員の育て方②】新人若手社員との1on1面談で絶対にやってはいけないこと/サイレントセールスの専門家 渡瀬謙氏

営業社員のモチベーションを引き出し、結果を出してもらうためには、正しい接し方が重要です。しかし、多くの管理職や上司が意図せず「逆効果」なアプローチをしてしまうことがあります。本記事では、営業社員とのコミュニケーションで陥りがちな3つの典型的な間違いと、それを回避するための具体的な解決策をご紹介します。


1. モチベーションを「上げる」ことを重視しすぎる

「モチベーションを上げれば成果が出る」という考え方は一見正しいように思えます。しかし、営業社員に対する過剰なモチベーションアップ施策は逆効果になることが少なくありません。特に内向的なタイプの社員に対して、朝礼やスローガンで「気合いを入れる」や「大声を出す」ことを求めるのは、彼らの意欲を削ぐ原因になります。

解決策:
モチベーションに頼らず、日々の業務で小さな成功体験を積ませることが重要です。たとえば、これまで訪問しても面会できなかった顧客と話せるようになった、商談の質が改善された、といったプロセスの進歩を見逃さずに評価しましょう。小さな達成感の積み重ねが、社員の自然なモチベーション向上につながります。


2. 「数字」や「目標達成」のみを評価する

営業部門では、売上や契約数などの数字が最終的な評価基準になることが多いですが、それだけを指標とするのは問題です。目標未達の場合、社員が自分の努力を否定されたと感じてしまい、やる気を失う可能性があります。また、数字に偏った評価は、プロセスでの成長や改善を見過ごす原因にもなります。

解決策:
成果だけでなく、過程をしっかり評価する姿勢が大切です。たとえば、「訪問件数が増えた」「提案資料の完成度が上がった」といった具体的な進歩を言葉にして伝えます。また、「この方向で合っている」と適切なフィードバックをすることで、社員は自信を持って仕事に取り組むことができます。


3. 同期入社やライバルの存在を強調する

「同期の○○はもう目標を達成したぞ」といった他者との比較は、競争心を刺激する意図で行われることが多いですが、多くの場合は逆効果です。他者との比較は社員にストレスを与え、自信を失わせる原因になります。特に内向的なタイプの社員にとっては、競争を強調されることで心が離れてしまうリスクがあります。

解決策:
個人の成長や過去との比較に焦点を当てましょう。たとえば、「以前に比べて資料作成のスピードが速くなった」や「提案内容が具体的になった」といった変化を具体的に伝えることで、社員は「自分も成長している」と実感できます。他人ではなく「自分との戦い」を意識させることが、モチベーション向上に効果的です。

営業部門のリーダーが果たすべき役割

リーダーや管理職は、現場社員と経営陣の間に立つ「クッション」の役割を果たすべきです。経営陣から課される厳しい目標やプレッシャーをそのまま現場に伝えるのではなく、状況を踏まえた適切な伝え方を心がけましょう。社員が「目標達成できない」と感じるのではなく、「今はこの方向性で正しい」と思えるようなメッセージを届けることが重要です。

実践例:

  • 目標未達の社員には、「次はこうすればもっと良くなる」と具体的なアドバイスを添える。
  • チームの成功事例を共有し、「この成果はみんなで作り上げたもの」としてチーム全体の士気を高める。
  • 定期的に1対1の面談を行い、社員が抱える不安や疑問を聞き出し、適切に対応する。

最後に

営業社員の成績向上は、モチベーションを一時的に高めることや数字だけを追い求めることでは実現しません。むしろ、日々のプロセスに目を向け、社員一人ひとりの成長を丁寧に支えることが、長期的な成果につながります。上司として、どのような言葉が社員のやる気を引き出し、逆にどのようなアプローチが意欲を削ぐのかを理解することが大切です。

社員との正しいコミュニケーションを通じて、個々の力を最大限に引き出し、チーム全体の成績向上を目指しましょう。