【営業社員の育て方①】なぜ営業社員を育てるのはこんなに難しいのか?悩める営業リーダーの道しるべ/サイレントセールスの専門家 渡瀬謙氏
営業社員の育成は、多くの企業にとって難題です。期待して採用した新人が短期間で辞めてしまったり、結果が出ないまま退職してしまったりと、悩みは尽きません。
この記事では、営業社員育成の難しさを解き明かし、その解決策を探ります。以下は、経験豊富な営業トレーナーの見解をもとに整理した、営業育成の課題とその改善策です。
営業社員を育てることが難しい5つの理由
1. 無意識のスキルが伝えられない
多くの営業上司は、かつて自分自身が成果を上げた経験を持っています。しかし、その成功体験の多くは無意識のうちに身に付けたスキルや習慣によるものです。これが問題になるのは、無意識に行っている行動を他人に教えるのが非常に難しい点です。
たとえば、営業の「センスがある」と評される人は、自分のどの行動が成果につながったかを正確に言語化できないことがあります。このため、新人に「感覚でやってみて」と指示するしかなく、結果的に再現性が低くなります。
解決策: 成果を上げたプロセスを言語化し、「この行動がなぜ成果を生むのか」を具体的に説明することが重要です。自分の行動を振り返り、無意識のスキルを可視化する練習を行いましょう。
2. 指導方法を学んだことがない
営業職の多くは、入社後に現場でスキルを磨きます。しかし「教え方」を体系的に学ぶ機会はほとんどありません。その結果、自分の経験や武勇伝を一方的に語るだけになり、部下の成長に寄与しないケースが多発します。
たとえば、「俺は昔100件電話をして成功したから、お前もやれ」といった指導が典型例です。このような方法では、現代の若手社員の納得を得ることが難しいでしょう。
解決策: 指導方法を体系的に学ぶことが必要です。ロジカルに説明し、納得感を得られるように工夫することで、部下の理解を深めることができます。
3. 論理的な説明が不足している
「気合いでやれ」や「笑顔で乗り切れ」といった指示は抽象的で、具体的な行動を導けません。特に最近の若い世代は、納得感を重視する傾向が強く、「なぜその行動をする必要があるのか」を求めます。
たとえば、「100件電話するといい」と指示された場合でも、「なぜ100件が重要なのか」という背景を説明できなければ、動機付けが弱まります。
解決策: 行動指示に対して理論的な裏付けを持たせましょう。「100件電話することで、見込み顧客の〇%が興味を示し、その中から成約に至る可能性がある」といったように、具体的なデータや理屈を示すことで信頼を得られます。
4. 「見て盗め」文化の弊害
かつては、営業スキルを「先輩の背中を見て学べ」と教える風潮がありました。しかし、この方法では、新人が上司の表面的な行動を真似るだけに終わり、本質を理解できません。たとえば、話し方や動作を模倣するだけでは、状況に応じた柔軟な対応力が身に付きません。
解決策: 営業プロセスを段階的に説明し、具体的な成功要因を共有することで、「なぜその行動が重要なのか」を理解させる必要があります。OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)でも、一方的な模倣ではなく、フィードバックを交えた学習環境を整えましょう。
5. 成果重視の昇進制度が指導力を阻害
多くの企業では、営業成績の良い人を上司や育成担当に据える傾向があります。しかし、成果を出したことと、他者を指導できることは別のスキルです。営業成績が良い人ほど、自分の成功体験を無意識に行い、言語化できないケースが多いため、育成には向かないことがあります。
解決策: 成績だけでなく、指導力や共感力を昇進基準に組み込むことを検討してください。特に、自ら努力して成績を上げた経験を持つ人は、無意識領域が少なく、指導に向いている可能性が高いです。
営業育成を成功させるためのポイント
- ロールプレイの活用
実際の営業シーンを再現し、指導者がフィードバックを行うことで、新人の理解を深めます。 - 具体的な目標設定
「1日50件のアポを取る」などの明確なゴールを設定することで、進捗を測りやすくなります。 - マイクロラーニングの導入
短時間で学べるスキルや知識を提供し、段階的に育成を進めます。 - 心理的安全性の確保
部下が質問しやすい環境を整えることで、理解を深めるとともに早期離職を防ぎます。
まとめ
営業社員の育成が難しい理由は、指導者自身が成功体験を無意識に行っていることや、教え方を学ぶ機会が少ないことに起因します。しかし、適切な指導方法を学び、部下が納得できる環境を整えることで、育成の成功率を上げることが可能です。
営業育成に課題を感じている方は、ぜひ今回のポイントを取り入れ、より効果的な育成環境を目指してください。