【営業必見】トップセールスは絶対に言わない!お客様から嫌われるNGフレーズ5選/サイレントセールスの専門家 渡瀬謙氏 × BtoB売れる仕組みの専門家 村上智彦
営業という仕事は、お客様とのコミュニケーションがすべてと言っても過言ではありません。ところが、何気なく使っている言葉のせいで、実は大切なお客様を逃してしまうケースが少なくないのです。
ここでは、元リクルートで半年間営業成績ゼロから全国トップへと駆け上がり、独自の内向型営業メソッド「サイレントセールス」で500社・2,000名以上の営業パーソンを指導してきた人気営業トレーナー・渡瀬謙氏の考え方を踏まえ、「トップセールスが絶対に言わない一瞬でお客様から嫌われる言葉」とその代わりに使うべき効果的な言葉の使い方をご紹介します。
まず押さえておきたいのは、トップセールスほど「言葉選び」を緻密に行っているという事実です。営業は「商品を売る」よりも「人間同士の信頼関係を築く」ことが先。ところが、当たり前に使われているいくつかのフレーズには、相手との関係を壊す“落とし穴”が潜んでいます。以下、代表的なNGフレーズと、その背景にある問題点、さらに代替となるアプローチを解説していきます。
「社長はいらっしゃいますか?」といきなり聞かない
飛び込み営業やテレアポでありがちな「社長(ご担当者)はいらっしゃいますか?」という一言。これがなぜ敬遠されるかといえば、受付スタッフからすれば「いや、今ここにいらっしゃいません」と断るほかなく、さらに言うと“本当にいても断りたい”という心理が働くことが多いからです。
特に飛び込みの場合、相手からすれば「突然やってきた知らない人」に貴重な社長の時間を割きたくはありません。あなたが本当に優れた商品やサービスを扱っていても、「とにかく会わせろ」「自分の都合だけを押しつけている」と見なされれば、受付でシャットアウトされてしまいます。
代わりに何をすればいいのか?
ポイントは、「すぐに会おう」としないこと。
最初の訪問では「社長にぜひお伝えしたい資料をお持ちしました。よろしければお渡しいただけますか?」というように、あくまでも「受付の方へ資料を届ける」スタンスで行くのです。受付の方に断りづらいフレーズを言わせないようにすることで、相手とのギスギスしたやり取りを避けられます。
これを数回繰り返して受付の方と顔見知りになれば、「実は社長、今いらっしゃるんですよ」とこちらから言わなくても教えてくれることが少なくありません。一発勝負で「会いたい」と迫るより、受付や担当者との信頼関係を築き、段階的に社長とコンタクトを取るほうが結果的に成功率が上がるのです。
「何かありましたらご連絡ください」と締めくくらない
商談や打ち合わせの終わり際に「では、何かありましたらご連絡ください」というフレーズを使う営業は多いでしょう。一見、親切な言い回しに見えますが、実はこれがほとんど機能しません。なぜなら、お客様側から「何かあった」としても、誰にどう連絡すればいいのか、具体的なイメージを持ちづらいからです。
代わりに何を言うべきか?
ポイントは「どんなタイミングで・何をしてくれたら連絡してほしいか」を明確にすること。
たとえば「ネジを探していらっしゃるときは、ぜひうちに声をかけてください。実はネジの品揃えには自信があります」と、具体的な場面と自分の強みを結びつけて伝えるのがコツです。
「ネジならこの会社」という印象が強く残れば、実際に困ったときにお客様は「そういえば前に来てくれたあの営業さん」と思い出してくれやすくなります。曖昧な「何かあったら」は記憶に残りづらいのです。
「この先ご購入される予定はありますか?」と未来を先に問わない
お客様に対してつい言いがちな「今後、こんな商品をご購入予定はありますか?」という聞き方も、実はあまり効果的ではありません。まだ具体的な検討段階に入っていなければ、「ないですね」とあっさり返答されて終わりになってしまいがちです。
お客様の頭の中には「予定なんてまだはっきりしていない。ここで“買う予定がある”と言ったら、ゴリ押しされるんじゃないか」という不安がよぎります。すると、ただ否定して断る道を選ばれてしまうのです。
過去・現在を起点に、ニーズを探る
「未来を聞く」のではなく、「過去から今に至る経緯」を尋ねるほうが、購入意欲や検討動機を自然に引き出せます。
たとえばパソコンの買い替え提案なら、
「今使われているパソコンはどのくらいの年数お使いですか?」
「その前はどんな機種でしたか? 乗り換えのきっかけは?」
と、まずは過去と現在を深掘りする。その中で「使い始めは良かったけど、オンライン会議の画質が気になってきた」というように、お客様自らが“買い替えの理由”を考え始めてくれるのです。
未来をダイレクトに問うより、「過去→今→これから」の流れを一緒に振り返ることで、お客様の抱える問題点やニーズが見えてきます。これが見えないまま「購入予定は?」と切り出しても、効果は薄いどころか拒否反応を引き起こす可能性が高くなるわけです。
「◯◯だからどうしても高くなってしまうんですよ」と言い訳しない
値段の話になったとき、よくある営業トークが「原材料のコストがかかっていて…」「人件費が高騰していて…」といった言い訳パターンです。しかし、この言い方はお客様にとってはあまり魅力的ではありません。結果的に「高いこと」に対する正当化や言い逃れにしか聞こえず、お客様の不満は解消されないのです。
価格より「価値」を伝える
価格交渉が持ち上がったら、むしろ「お客様はこの商品を通じて何を実現したいのか」を再確認しましょう。たとえば求人広告なら、
「この求人で優秀な方が採用できたら、どんな展開をお考えですか?」
と話を広げ、採用成功による利益や会社の成長ビジョンを共有するのです。「コストが高い」と感じられれば感じられるほど、その先に得られるメリットを強くイメージしてもらう必要があります。
価格の正当性を「原価」や「人件費」で説明するのではなく、お客様が受け取る「成果」や「メリット」にフォーカスする。これによって「この投資は妥当だ」とお客様自身が納得しやすくなります。
「A案とB案、どちらにしますか?」の二択だけで迫らない
複数プランを提示する際、「AとB、どっちにしますか?」と聞いてしまうと、押し売り感が強まることがあります。お客様がまだ迷っている段階なら、選択を迫られた瞬間に「まだ決められない」「そもそも断ろう」という思考に切り替わってしまうのです。
「断ってもいい」選択肢を提示する
A案・B案に加えて、あえて「C案」を用意しておくことをおすすめします。C案というのは、「今回は見送る(買わない)」も自由に選んでいいですよ、という“断りやすさ”のオプションです。
意外に思われるかもしれませんが、人は「いつでも断れる」とわかっているほうが、商品やプランを冷静に吟味できるものです。強引に迫られるプレッシャーが消えると、かえって「A案とB案の違いって具体的にどこなんだろう?」と真剣に検討してくれる確率が高くなります。
「絶対に買わせる」のではなく「納得したら買っていただく」姿勢こそが、お客様の信頼を勝ちとる近道です。
NGワード・NGフレーズに共通する落とし穴
ご紹介した5つのフレーズには、共通して「営業側の都合」を押しつける構図があります。
- 「社長はいらっしゃいますか?」は、自分が会いたいタイミングを押しつけている
- 「何かありましたらご連絡ください」は、自分の営業行為を雑に後回しにしている
- 「この先ご購入される予定は?」は、相手の状況を深く探らずに迫っている
- 「高くなってしまうんですよ」は、価格の言い訳をしている
- 「A案かB案、どっち?」は、強制的に決断を促している
これらはすべて、お客様にとっては「自分たちのメリットをしっかり考えてくれているのか?」と疑問を抱かせるトリガーになりがちです。トップセールスほど、「お客様がどう感じるか」「どう受け取るか」を優先して考えた言葉を選ぶことで、余計な摩擦を起こさないようにしています。
まとめ:お客様視点の言葉が、結果的にあなたの成果を高める
営業トークはただの“話術”ではありません。むしろ、「相手を尊重する姿勢」「お客様のメリットを最大化しようとする思い」が言葉選びに表れるのです。トップセールスほど、お客様の行動心理や感情をよく理解し、NGワードを避けながらもスムーズにニーズを引き出す術を身につけています。
1回きりの商談で終わるのではなく、「長いお付き合い」に発展させるためには、お客様の心証を損なわない言葉を使い続けることが大切です。強引なプッシュや営業都合だけでは、たとえ一時的に契約を取れても、継続的な信頼にはつながりません。
NGワードを意識し、「お客様がどう感じるか」を常に考えて言葉を選びましょう。それだけで、自分の印象が驚くほど良くなり、商談の場がスムーズに進んでいくはずです。たとえ“断られる”シチュエーションでも、次回のチャンスに結びつくきっかけをつくることができます。
営業の現場は日々変化し続けていますが、人と人が向き合う以上、「尊重」と「信頼」がなくなることはありません。NGワードを減らし、お客様視点に立った“サイレントセールス”のエッセンスを取り入れてみてください。渡瀬謙氏が提唱するように、自分のセールススタイルに「内向型の配慮」をプラスするだけで、これまで苦手だった局面が意外なほどスムーズに進むようになるかもしれません。
さあ、あなたも今日から自分が発する言葉を見直してみてください。トップセールスが使わない言葉をあえて手放し、お客様に寄り添ったフレーズを選び直すことで、営業成績はもちろん、人間関係の質も大きく向上するはずです。ぜひ実践してみてください。