ネットフリックス、広告付き低価格プラン導入で戦略転換!儲かる仕組みの基本とS字カーブに合わせた成長戦略の考え方

米動画配信大手のネットフリックスは、2023年初めに「広告を付ける代わりに価格を抑えたプラン」を導入することを発表しました。

ネットフリックスは、これまで会員からの料金で収益を得てきました。しかし、競合サービスが増え、動画配信が成熟市場に近づく中、2四半期続けて会員が減少。2022年1〜3月期では20万人減、4〜6月期では97万人減となっています。

価格競争にも巻き込まれ、複数回の値上げも行ってきたネットフリックスは、他と比較すると高価格帯の位置づけとなっていました。会員数は減少していますが、一方で値上げもしていますので、トータルの業績で見れば、14四半期連続で売上UPしています。

今回の低価格プラン導入は、会員の退会防止や新規獲得など、「ちょっと高いなぁ」に対する打ち手です。競合他社が提供する広告付き低価格プランでは、新規会員獲得にはポジティブに働いています。

たとえば、2021年夏に米ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーの「HBOマックス」は、広告付き低価格プランにより、2022年1〜3月期に会員を300万人増やしました。ネットフリックスは広告なし標準プランが月15.5ドルに対して、HBOマックスの広告付き低価格プランは10ドル。「ネットフリックスは高い」と思われても不思議ではありません。

いわゆる市場ライフサイクル、プロダクトライフサイクルの話で、S字カーブがありますよね。混沌とした導入期・成長期を抜けて、市場が成熟期に入ると、価格競争がより熾烈になります。

これまでは、市場の成長に乗って伸びてきたものの、他社との差別化や独自ポジションを勝ち取れない商品サービス、広告宣伝投資力・キャッシュ耐力の乏しい会社は、淘汰されていきます。そして、各市場でシェアや順位づけがおよそ確定してくるわけです。

私たち中小ビジネスでは、ネットフリックスのような大衆向け・マス向けの商品サービスというより、ニッチ市場向けの高単価な商品サービスを提供しているケースが多いでしょう。

新規集客や顧客獲得のフロントエンド商品では低価格で勝負するのは良いです。

しかし、利益確保のためのバックエンド商品まで安さ勝負せざるを得ない状況だと、頑張っているのにまったく儲からない、泥沼ビジネスに陥ります。

フロントエンドでは低価格で顧客獲得、バックエンドでは高価格・高粗利やリピートで利益確保。

これが、売れる仕組み、儲かる仕組みの基本パターンです。そして、構成されるフロントエンド・バックエンド商品の位置付けは、S字カーブのどこにいるかによって変動するものです。

ネットフリックスのような大衆向け・マス向けの商品サービスには、バックエンドがない場合が多いので、広告宣伝への先行投資をサブスク型で回収するのに、より長期間を要することになります。

広告宣伝投資力・キャッシュ耐力の乏しい会社が、いよいよ消えていくフェーズに入った証拠ですね。