【経営破綻】欧州発、有名エコアパレル企業Renewcellが破綻したワケ

欧州を代表するエコアパレル企業であるRenewcell(リニューセル)が、今年2月に破産申請をしました。

Renewcellは、環境に優しいアパレル素材開発を目指すスウェーデン発のスタートアップ企業です。

Renewcellは、さまざまな投資家から資金を調達しています。中でも、H&MはRenewcellの大きな支援者の1つであり、両社は持続可能なファッションの推進において協力関係にあります。また、スウェーデンの投資会社Girindus Investmentsや、ファッション業界に特化したベンチャーキャピタルであるFashion For Goodも、Renewcellの支援者として知られています。

Renewcellの強みは、リサイクル繊維「Circulose(サーキュロース)」の製造技術にあります。同社は古着や製造過程での繊維くずを原料として、新たな繊維素材を生み出すことに成功しています。この技術は、セルロースベースの繊維を化学的に分解し、再生可能な溶剤を使用して純度の高いセルロースパルプを生成するプロセスです。その後、このパルプから新しい繊維が生産され、さまざまなファッション製品に利用されます。この技術を大量供給するインフラ整備によって、環境への負荷を大幅に削減しながら、高品質なリサイクル素材を提供することが可能となりました。

Renewcellの目標は、持続可能なファッション業界の発展に貢献することであり、その技術とビジョンは世界中から注目を集めていたわけですが、最近の発表では、経済的な困難により破綻したことが明らかにされました。

なぜ、有名企業や投資家からも注目され、バックアップを受け、社会課題や環境問題を解決する先進技術もインフラも兼ね備えていたにも関わらず、Renewcellは破綻したのか。

私たち日本の中小企業やスモールビジネス、スタートアップにも通ずる基本原則が、私はあると思います。

それは「顧客の利益に貢献できないビジネスは成功しない」ということ。

Renewcellにとっての顧客とは誰でしょうか?ファーストリテイリングやH&M、ZARAのようなアパレル企業ですよね。実際にファーストリテイリングとも商談交渉を進めていたそうですが、首を縦には振らなかったそうです。なぜでしょうか?理由は簡単です。彼らの利益に貢献できる内容ではなかったから。

顧客企業の利益とは何でしょうか?株価上昇、利益拡大、販売数増加、顧客数増加、売れる商品企画、コスト削減などですね。社会課題や環境問題を解決したいビジョンや先端技術、インフラは素晴らしいものです。

しかし、実際に提供するアパレル素材を導入することによって、顧客企業やその向こう側の一般消費者にとっての実利がない、利益が損なわれるのであれば、YESとはなりませんよね。顧客が民間企業である以上、経済合理性に反する意思決定をすることはないでしょう。

それはある意味、人間が根源的欲求や本能に勝てないのと同じことかもしれません。いくら健康の悪いとわかっていてもラーメンを食べてしまうし、運動が身体に良いとわかっていてもジョギングをサボってしまうし、自炊して節約したいと思っていても仕事で疲れて外食ばかりになるし。

もしRenewcellが提供する素材を使うことによって、単にサステナビリティだというだけでく、明らかなコスト削減、高くても売れる商品、取り込めていなかった新たな顧客層の獲得を実現できるのであれば、状況は違っていたかもしれませんが、その向こう側の一般消費者が果たしてお金を払ってくれるかどうか... 

あなたのビジネスは、顧客にどんなベネフィットを提供するものですか?そのベネフィットは、本当に顧客が望むものでしょうか?