リクナビやマイナビ、dodaに頼らずに最少コストで欲しい人材を採用する戦略/中小企業3,000社を支援する採用の救世主 トランスヒューマン代表取締役 渡邉崇 × BtoB売れる仕組みの専門家 村上智彦

大手企業が採用強者として「リクナビ」「マイナビ」などの王道求人媒体を使ってもうまくいくのに対して、なぜ同じ方法を取った地方・中小企業には人材が集まらないのか。その理由を整理し、代わりにどのような採用活動を行えば“採用弱者”でも人を採れるのかを解説していきます。

本記事のポイントは、元リクルート出身で数多くの大手企業の採用戦略を手掛け、現在は地方の中小企業に特化したサポートを行う「採用の救世主」こと株式会社トランスヒューマン代表・渡邉崇先生の考え方をもとにしています。

「採用強者」と「採用弱者」の違いとは

大手企業が採用強者たりえる理由

大手企業は知名度やブランド力が高く、募集広告を出すだけでも応募が集まりやすい傾向があります。リクナビやマイナビなどの王道媒体に掲載し、会社説明会を開催すれば、自然と「応募者の母数」が確保できるのです。いわゆる“顕在層”と呼ばれる、「転職したい」「就職したい」と積極的に動いている層が大企業の求人に対しては応募しやすく、質・量ともに確保しやすいわけです。

中小企業が採用弱者に陥る理由

一方、地方・中小企業は知名度や企業ブランドが十分に形成されていないことが多く、王道媒体を利用しても「そもそも見られない」「応募があっても辞退される」という状況に陥りがちです。応募者が集まったとしても、条件面だけで比較されると大手企業に軍配が上がってしまうため、なかなか内定承諾に至りません。

しかし実は、地方・中小企業には「柔軟な働き方がしやすい」「経営者との距離が近い」「新しい取り組みを任されやすい」など、大手にはない大きな魅力があります。それを上手に伝えられれば、企業側にとっても求職者側にとっても大きなメリットになるのです。

「顕在層」と「潜在層」に分けて考える

採用弱者が意識したいのは、転職サイトなどを日常的にチェックしていない「潜在層」の存在です。採用強者であれば、顕在的に転職活動をしている優秀層を王道媒体でうまく拾い上げることができますが、採用弱者がそれを真似してもうまくいかないことがほとんどです。

  • 顕在層:すでに転職・就職をしようと動いている求職者
  • 潜在層:いつか転職を考えている・転職しようか迷っているが、具体的に動いていない求職者

潜在層の人材には、本人ですらまだ気づいていないポテンシャルを持つ人が多く、そこを掘り起こすのが採用弱者にとっての鍵となります。「自分なんて…」と思いこんでいるけれども、会社が力を引き出せば活躍できる可能性がある人を見つけ、実際に面接へとつなげる仕掛けが大切です。

無料で始められる「ハローワーク」

情報の書き方を変えるだけで応募者が変わる

採用弱者だからこそ、まずは無料で利用できるハローワークを活用するべきです。ただし、よくありがちな「職種」「待遇」「条件」などのハード面だけを羅列する書き方では魅力が伝わりません。ポイントは“求める人物像”や“実際に活躍している先輩社員の前職”などを具体的に記載することです。

    • 「前職アパレルだったスタッフも活躍しています」
    • 「元フリーターや異業種出身者も多数在籍!」
    • 「当社が今、特に困っているのは○○。一緒に解決してくれる方を募集しています」

こんなふうに、少しでも応募者が「自分でも活躍できそう」「異業種からでも挑戦できそう」と想像できるような情報を加えるだけでも、応募件数に変化が出てきます。

地方企業ならではの「ローカル媒体」の活用

地方には独自のフリーペーパーや、求人情報を取り扱うローカル媒体が存在します。全国区の求人サイトよりも費用を抑えられ、かつその地域で暮らす人々へのリーチが大きい場合も。

ここでも、定番の原稿フォーマットに沿っただけの掲載では目立ちません。ちょっと目を引く見出しや、写真・デザインの工夫を盛り込むことで「この会社なんだろう?」と興味を持ってもらう仕掛けが大切です。

SNS活用:全部を伝えすぎない「掴み」

近年はTikTokやYouTubeなど、動画を使った情報発信が盛んです。動画であれば職場の雰囲気がわかりやすく伝わるため、有効な手段の一つといえます。ただし、いきなり会社概要のすべてを詰め込んだ“盛り込みすぎ”動画は逆効果。見る側としては情報が多すぎて疲れてしまうものです。

まずは「うちの会社はこんなところが面白い」「先輩スタッフはこんなキャラクター」という“掴み”だけを短い動画で見せること。そして、興味を持ってくれた人をさらに詳しいページへ誘導する流れを意識すると、少ない労力で最大の効果を得られます。

“ハイスペック”を狙わないなら「人材紹介」はいらない

人材紹介会社は、ある程度ハイレベルな経歴や専門スキルを持っている人材の紹介を得意とする傾向があります。一般的には「●●ができる即戦力人材を求める」といった場合にマッチしやすいですが、地域や業界を絞った採用で「将来的に育ってもらいたい」という意図があるなら、人材紹介会社だけでは十分な結果が出ない可能性が高いでしょう。

むしろ、既存社員の紹介や自社のSNSによる発信など、周囲の潜在層に直接アプローチできる方法に注力してみると「意外な人が見つかった」というケースも少なくありません。

説明会や面接で必要なのは“加点方式”

加点方式とは

新卒採用や一般的な中途採用では、どうしても「減点方式」で面接をしてしまいがちです。学歴や経歴でチェックし、ミスマッチがあれば落とす方法です。ところが、採用弱者である企業こそは「この人のどんな部分に可能性があるか」を探る“加点方式”での面接が重要になります。

  • 質問例
    • 「今まで経験した仕事で、自分が一番楽しかった部分は?」
    • 「転職を繰り返してきた背景を教えてもらえますか?」
    • 「その経験の中で得た、一番の強みはなんですか?」

応募者が「自分でも気づいていなかった強み」を話してくれたり、ブレイクスルーのきっかけが見つかるかもしれません。

妥協してもいい部分と、してはいけない部分

もちろん、すべてを受け入れてしまうと入社後の定着率や業務クオリティに問題が出る可能性もあります。企業として「最低限、ここだけは譲れない」という軸と、「ここは入社後に教育やフォローで伸ばせる」という部分を見極めることが大切です。その軸を事前に明文化し、採用担当者や面接官で共有しておくと、面接時の判断もしやすくなります。

コストを無駄にしない“上流工程”へのコミット

広告代理店に丸投げしない

求人広告の制作を依頼する広告代理店の多くは、基本的に「広告枠の出稿」や「原稿作成」がメイン業務です。広告が掲載されて応募が来ようが来まいが、最終的に企業が満足できなかったとしても、広告代理店には責任が及ばないケースが大半です。

そこで重要なのは、「なぜその人材が必要なのか」「どんな未来像を描いているのか」など、採用の最上流の設計段階から一緒に考えてくれるパートナーを見つけること。たとえば渡邉崇先生のように、地域企業の特性に合わせて広告づくりやSNS発信・面接手法まで総合的にアドバイスできる存在がいると、無駄なコストや遠回りを防ぐことができます。

自社の採用ゴールを明確化する

  • 「即戦力人材をどの部署に何名くらい欲しいのか」
  • 「将来、会社の主力となる若手をどう育成していくのか」
  • 「パートタイムや週休○日など、柔軟な働き方の人材を何名採用したいのか」

漠然と「採用したい」と考えるのではなく、細かい要件を整理し、優先順位をつけておくことで、外部パートナーと連携しながら効果的に採用活動を進めることができます。

まとめ:採用弱者でも“最小のコストと手間”で人材を獲得する方法

  1. “潜在層”にアプローチする仕掛けを用意する
    • ハローワークを上手に使う:求める人物像を具体的に書く
    • 地元のフリーペーパーなどローカル媒体を活用
    • TikTokやYouTubeは“掴み動画”にとどめて興味を引く
  2. 面接では“加点方式”を意識する
    • ミスマッチを見つけて排除するのではなく、候補者の可能性を探る
    • 妥協できる部分と、できない部分をあらかじめ明確にする
  3. 上流工程から採用にコミットしてくれるパートナーを見つける
    • 原稿制作だけで終わらない、本質的な採用ゴールを共有できる相手
    • 地域密着型で、かつ企業文化や社風に合った採用戦略を提案してくれる存在

地方・中小企業だからこそ、大手が真似できない「社内の温かい雰囲気」や「新しいことを任せてもらえる自由度の高さ」など、実はアピールできるポイントはたくさんあります。そこをうまく掘り起こし、潜在層にも届く形で発信することが鍵です。

今すぐ目に見える派手な効果はなくても、少しずつコツを押さえた採用活動を続ければ、長期的には企業のファンが増えていきます。そして、自社を心から応援してくれる求職者こそが“欲しい人材”になり得るのです。そうした人材との出会いは、お金だけでは決して手に入りません。今回ご紹介した内容を意識して、ぜひ自社独自の採用手法を実践してみてください。

採用の救世主・渡邉崇先生のような専門家の知見や経験を借りながら、自社に合った採用戦略を練り上げれば、“採用弱者”から抜け出すことは十分可能です。無駄なコストをかけず、長期的に成長できる人材を確保していきましょう。地元に根づいた企業が優秀な人材をうまく採用できるようになれば、地域全体の活性化にもつながるはずです。

これまで大手の成功事例ばかりを参考にしても効果が出なかった方は、ぜひ今回の内容をヒントに、新たな一歩を踏み出してみてください。