【採用戦略の真実】9割の企業が見落としている「お宝人材発掘法」とは?/中小企業3,000社を支援する採用の救世主 トランスヒューマン代表取締役 渡邉崇 × BtoB売れる仕組みの専門家 村上智彦

地方の中小企業が採用活動を行う際、どうしても大卒・高スペック・転職回数が少ない即戦力人材を求めてしまいがちです。しかし、そうした“就職強者”は大手企業との取り合いになります。残念ながら、知名度や給与・待遇面で圧倒的に有利な大手には太刀打ちしにくいのが現実です。

そこで提案したいのが「就職弱者」の採用に目を向けること。ここでいう就職弱者とは、学歴や年齢、ライフイベントなどの理由から、従来の採用市場では不利とされてきた人々を指します。

かつてリクルートで大手企業の採用戦略を手がけ、さらに地域活性化に関するシンポジウムなども主催。現在は株式会社トランスヒューマン代表として地方中小企業を中心に3,000社以上を支援している「採用の救世主」渡邉崇先生も、「就職弱者こそが地方中小企業にとっての宝の山」と強く提唱されています。

本記事では、就職弱者を大きく7つのタイプに分け、その特徴と採用メリットを整理します。さらに、具体的な活用ポイントや育成のコツも解説します。大手有名企業と同じ土俵で戦わず、独自の採用戦略で“お宝社員”を見いだすヒントをつかんでください。

就職強者と就職弱者の違いとは

はじめに、就職強者と就職弱者の定義を簡単に確認しましょう。

  • 就職強者
    一般的には若年層(10代後半~30代前半)の大卒以上、あるいは有名大学出身の人材、社会人として即戦力となるビジネスマナーや経験がある人材を指します。コミュニケーション力や巻き込み力に長けており、大手企業が真っ先に獲得を目指す層です。
  • 就職弱者
    上記以外の層――年齢的ハンデを抱える高齢者や、ライフイベント(育児や介護など)によって就業制限がある方、就職氷河期世代、フリーター・ニート、障がいを持つ方などが含まれます。一般的に採用市場では「不利」とされがちな人材ですが、実は“宝の山”でもあります。

なぜ宝の山といえるのか。それは「企業に合う人材が意外なところに埋もれている」からです。地方中小企業にとって大切なのは、社内で長く貢献してくれる社員をいかに発掘し、戦力化するか。その観点で考えると、就職弱者の方々を“うちの会社の色に染めて育てる”ことは十分に可能であり、コスト面や定着率の面でもメリットが期待できます。

7タイプの就職弱者とその可能性

ここからは、就職弱者と呼ばれる7タイプの人材を紹介し、それぞれにどういった強みや可能性があるかを見ていきます。

1. 高齢者

  • 特徴
    一般に50代後半~60代以上の方は「長く働けない」「やり方が固まって柔軟性に欠ける」などと思われがち。
  • 可能性
    経験豊富で人生100年時代をたくましく生き、体力も気力もまだまだ衰えていない人が少なくありません。大手金融や外資系企業で管理職を経験してきたようなハイスキル人材が、実は“激安”で採用市場に出てきているケースもあるのです。
  • ポイント
    年齢を理由に門前払いにするのではなく、「何ができる人なのか」をしっかり見極めましょう。経営ノウハウや人脈を持ち、若手の指導役としても活躍してくれることが多いはずです。

2. 女性

  • 特徴
    結婚・出産・育児などライフイベントが多く、仕事と家庭の両立の難しさが課題になりやすい。
  • 可能性
    育児休暇や時短勤務など制度が整っていれば、長く働いてくれる人材になり得ます。スキルも高く、マルチタスク能力に優れる女性は多いです。
  • ポイント
    地方中小企業であっても、育児休暇や在宅ワーク(リモート勤務)など柔軟な働き方を整えることが重要。そうした取り組みを前面に打ち出すと、採用にも大きくプラスになります。

3. 育児・介護中の方

  • 特徴
    家族の事情などでフルタイム勤務が難しい場合が多い。
  • 可能性
    部分的な在宅ワークやパートタイムでも、即戦力となるスキルを持つ方はたくさんいます。むしろ「限られた時間で効率よく成果を出す」意識が高い人も多いです。
  • ポイント
    朝から夜までフルで働くことを前提にすると、こうした優秀層を取りこぼします。リモート対応や時短正社員制度などを導入することで、企業のスキル不足を補う新たな戦力を得られるでしょう。

4. U・I・Jターン

  • 特徴
    地元(地方)に戻って働きたい方、あるいは全く縁のない地域に移住して働きたい方。
  • 可能性
    震災をきっかけに地元に戻って街の復興に貢献したい、など“熱い思い”を持っているケースも多く、企業にとっては長く働いてくれる人材に育ちやすい。
  • ポイント
    「地方で何ができるかわからない」と踏みとどまってしまう方もいるため、企業側が地域や会社の魅力を発信し、受け入れ体制を明確にしてあげるのが大切です。

5. 就職氷河期世代

  • 特徴
    新卒で正社員採用されづらい時代に社会に出てしまい、やむなく派遣やアルバイト、契約社員を経験し続けてきた人々。
  • 可能性
    すでに社会人経験が長いぶん、実務的なスキルや責任感を持っている人も多い。正社員として活躍したいというモチベーションも高めです。
  • ポイント
    就職氷河期世代は非正規雇用のまま年齢を重ねてきたため、転職市場で“自分はもう遅い”と引け目を感じがち。企業から積極的に「歓迎」「応援」する姿勢を見せると応募意欲を高められます。

6. フリーター・ニート

  • 特徴
    正社員経験がない、または社会参加そのものを一時的に避けていた方も含まれます。
  • 可能性
    いざ働くと決めたときの意欲が高く、スキル習得が早い人も少なくありません。アルバイトや派遣など、多彩な職種経験を活かせるケースもあります。
  • ポイント
    まず社会に出ることの心理的ハードルが高いため、入社後のフォロー体制や研修が重要。少しずつ段階を踏んで職場になじむ仕組みを整えると良いでしょう。

7. 障がいを持つ方

  • 特徴
    外見でわかる身体障がいだけでなく、内部疾患や発達障がいなど多様なケースがある。障害者手帳の所持など制度利用にも差がある。
  • 可能性
    高い集中力や専門性を持つ方が多数存在し、定型業務やIT分野で即戦力となる場合も多い。企業としては障がい者雇用率を満たすこともでき、社会貢献につながる。
  • ポイント
    個々の特性をよく理解し、得意な業務をアサインするなどきめ細かなマッチングが不可欠。本人の強みを活かせる職場づくりが成功へのカギです。

採用コストの「入り口」より「育成」に投資しよう

就職弱者と呼ばれるこれら7タイプの方々を採用するとき、最も大切なのは「適切な育成環境の整備」です。大手企業と同じように、高額な求人広告や説明会の費用をかけて“就職強者”を奪い合っても、地方中小企業はコストばかりがかさみ、成果が得られにくいのが実情でしょう。

一方、「お金をかけて大々的に採用活動をする」のではなく、「採用後に投資する」という発想に切り替えれば、比較的安価に人材が集まります。そして入社後の研修やOJTに時間・コストをかけて、本人の能力を引き出し、社内の色に染めていけば、長期的に見たとき高いリターンが得られるのです。

就職弱者を“お宝社員”として活かすポイント

個々人に合わせた導入研修・配置

従来の一律的な導入研修や試用期間では、就職弱者の方々は力を発揮しづらい場合があります。本人の得意分野や苦手分野を早期に把握し、小さな成功体験を積み重ねる仕組みをつくるとモチベーションが高まります。

メンター制度や相談窓口の整備

高齢者やフリーター、ニートなど、勤務形態や職歴にギャップがある人材には、相談役やメンターをつけると安心感を得られます。メンタル面のケアや具体的な業務支援があれば、成長スピードは格段に上がるでしょう。

柔軟な働き方の導入

育児や介護中の方、女性、高齢者などには、在宅勤務や短時間勤務など多様な働き方を用意すると採用・定着率が上がります。ITツールを活用すれば、通勤を前提としない形でチームに貢献できる人材を取りこむことも可能です。

成果を正しく評価する仕組み

本人が感じているハンデを企業が乗り越えやすくするためにも、定期的な面談や成果物の共有は重要です。特に、やればやるほど評価が上がる公平な仕組みを整え、成長が見える化されれば、意欲が持続します。

地方中小企業が今こそ採用戦略を変えるべき理由

人口減少が続き、若年層の流出が進む地方では、これまで以上に「人材確保」が経営の大きな課題になっています。大手企業と真正面から張り合うのではなく、自社が活かせる人材を探して丁寧に育てる――それこそが地方中小企業の“勝ち筋”です。

就職弱者には、多様な人生経験やユニークなスキルを持つ人が大勢います。むしろ、従来の枠組みや大手の選考基準では評価されなかった「熱意」や「人間力」を十分に持っている可能性は高いのです。こうした人材を発掘できれば、思わぬイノベーションを起こしてくれるかもしれません。

まとめ:就職弱者という“宝の山”を狙え

地方の中小企業における採用は、もはや「学歴・即戦力」だけを追い求める時代ではありません。むしろ“就職弱者”と呼ばれる人たちを迎え入れ、丁寧に育成し、長く働いてもらう戦略が大きな成果につながるのです。

  • ポイントは、採用コストを“入り口”より“育成”に回すこと。
  • 7タイプの就職弱者が持つ強みを見極めて、適所に配置すること。
  • 個々のハンデを理解した上で、柔軟な働き方や研修制度を整えること。

こうした取り組みを丁寧に実行すれば、大手企業とはまったく異なる採用ルートから優秀な“お宝社員”を手に入れ、企業も地域も豊かに成長していく未来が開けるはずです。現在3,000社以上を支援してきた渡邉崇先生の経験と知見も、そうした成功事例を数多く証明しています。

大手と同じ土俵で戦わず、あえて「就職弱者」を狙う新たな採用戦略。地方中小企業こそが持つ“人間味”や“育成力”を最大限に活かし、これからの地域経済を牽引する担い手を発掘・育成していきましょう。あなたの企業に眠る可能性を、どうか見逃さないでください。