Amazon創業者、ジェフ・ベゾスの秘密。事業成長ステージごとの「リスク利益率」の取り方とは。

「失敗の達人」と呼ばれ、称賛される人物がいます。Amazon創業者、ジェフ・ベゾス氏です。

インターネットの黎明期1994年に、自身と妻、2名のエンジニアの計4名で創業したAmazonは、1997年には米NASDAQに上場。

1999年には累計ユーザーが1,000万人に到達。2000年に日本上陸。2001年に黒字化。

Amazonプライム会員数は、2020年時点で1億5000万人を超えています。クラウドサービスのAWS(アマゾンウェブサービス)も大きな収益の柱に成長。

そして、ベゾス氏は2020年、資産総額およそ20兆円、世界一の資産家になりました。

◾️なぜベゾスは大成功できたのか

ネット書店を立ち上げたベゾス氏は、なぜ大成功できたのでしょうか。

創業期から彼を支えてきた人たちはこう話しています。

「彼はリスクの達人だ」
「仕事上のリスクを投資だと考える人は、ジェフ・ベゾスだけ」

そして、ベゾス氏も自身の成功要因の一つとして、次のことを述べています。

「これは本当に大切なのですが、継続して実験を行わない会社や、失敗を許容しない会社は、最終的には絶望的な状況に追い込まれます。」

つまり、失敗しないということは、挑戦していないことを意味するわけなので、実験や失敗のない会社は、最後には行き詰まるだろうということです。

◾️「リスク利益率」と成長段階ごとの選択

ご本人の発言や文献を読むと、彼には「リスク利益率」という発想があるようです。

私たち社長は、リスクを経済的な側面から捉えがちです。でも実際には、人や時間、名声や評判、誰と競争するか、などの多様なリスクが存在します。

ベゾスは、自社が取るリスクに対して、得られる利益、成功、リターンの比率を計算します。

そして最初は、リスクに対する比率を最大化できる選択をして、次に成功の大きさを最大化できる選択をしてきました。

たとえば、様々なリソースが乏しい創業期は、リスク1に対して、成功の大きさ10、リスク利益率10となるような選択をします。

成功の大きさは小さくとも、自社の体力に合わせて許容できるリスクに対する成功比率が高く期待できるような実験や試行錯誤をするということです。

会社が成長してくると、より大きなリスクを取ることができるようになります。

その結果、リスク10に対して、成功の大きさ70、リスク利益率7と比率は多少落ちても、1つの実験や挑戦により大きなリスクを取り、さらに大きな成功を実現する選択をします。

いずれにしても、会社や事業の成長ステージに合わせて、「リスク利益率」を考えながら、適切なサイズのリスクをどんどん取り、大量の実験と失敗を積み上げてきました。

それが、ベゾスが「失敗の達人」と呼ばれる由縁かもしれません。

◾️リスクの取り方を「実験」する

「リスクを取って挑戦しよう」という言葉だけ聞けば、そんなことはあたり前だと思われるかもしれません。

でも、私たちが実際に正しく実行できているかは別の話ですよね。

たとえば、新規事業を立ち上げよう、新商品サービスをローンチしようと考えているとします。

・過去1年間で何件の実験をしたでしょうか
・何回のテストマーケティングをしたでしょうか
・何個のキャンペーンが売れずに失敗したでしょうか

1年に1個2個しか実験していない会社と、1年に10個20個を実験している会社。どちらが成長すると思いますか?

あるいは、創業まもない時期から、過剰なリスクを取りながら期待できる成功が小さい手段を選択していないでしょうか?

「リスク利益率」の低いビジネスモデルや商品サービス形態に、むしろ踏み出そうとしていないでしょうか?

「失敗の達人」になるということは、なんでもかんでもリスクを取り、挑戦すれば良いというものではありません。

自社のキャッシュ体力や事業成長ステージに合わせた適切なリスクの取り方、優先して取り組むべきタイプの実験選び、実験量や回数を、2023年の事業成長のためにぜひ考えてみてください。