ニデック(旧・日本電産)の永守重信会長に学ぶ、会社を潰さないお金の戦略とは?

今日は、会社を潰さないお金の戦略について話します。2022年に日本電産から社名変更したニデック、永守重信会長の著書『永守流 経営とお金の原則』は、私が何度も読み返している本の1つです。

世界シェア11%超え、連結売上2兆2千億円、グループ300社、従業員10万6000人。そんな世界NO.1モータメーカーを築いた永守会長の考え方・やり方の中で、私たち中小ビジネスでも真似できるポイントはあるのか。会社を潰さないためのお金の戦略、利益=キャッシュをいかに確保し続けて、盤石な経営をしていくかについて、私が学んだことをシェアします。

永守会長といえば、ものすごく情熱と気迫で経営をされている強いイメージがありますよね。でも、著書の中で、経営は夢とロマンと「怖がり」であると話しています。

1973年、永守会長が日本電産を創業した頃、日本はオイルショックでした。経済は混乱し、金利も空前の高水準に上昇しつつありました。金融機関の融資態度も厳しく、夢を抱いて創業した企業の多くは早々に消えていきました。

永守会長の周りにも、同じ時期に起業した知人・友人が10人ほどいましたが、みな早い段階で会社を潰してしまったそうです。家族や働く人たちは路頭に迷い、融資してくれた金融機関や取引先には多大な迷惑をかけます。夢も潰えてしまいます。

こうした経験から、永守会長は「会社を潰さないためにはどうすればよいか」を創業以来、ずっと常に念頭に置いて経営をされてきました。どんなに規模が大きくなっても、経営戦略を立てて実行する時には、必ず最悪の事態を想定します。

誰にも負けない大きな夢やロマンを持つ一方で、人一倍、肝っ玉が小さく、家族からも「なんでそんなに怖がりなのか」とあきれられるほど。経営者として、怖がり、臆病さは極めて重要な資質なのかもしれません。

まぁそうは言っても、永守会長の経営や生き様を振り返れば、「私も小心者で臆病な社長の一人として共感できる」なんて偉そうなことは言えませんけどね笑 でも「永守会長だからできたんでしょ?」と片付けるのは簡単ですが、私は学んで真似できるエッセンスがあると思うんです。

1つ目は「バランスシートを頭にたたき込む」

永守会長と同じ時期に会社を旗揚げしたにも関わらず、早々に退散していった経営者たちを思い出してみると、共通するのはみな経営や財務の「数字」に弱かったとのこと。

ある人は決算書がまったく読めず、バランスシート(貸借対照表)が何なのかも理解できないまま、財務面を人任せにしていました。

ある人は典型的な技術屋タイプで、技術さえあればビジネスがうまくいくと思い込み、金融機関からどうすれば資金を引き出せるかなどについて、知識やノウハウがありませんでした。

彼らは皆、優秀な技術者であり、志を持った起業家でした。日々一生懸命に働いて、それぞれに良い製品を作っていました。

でも、お金まわりの戦略について、あまりにも無頓着でした。少しでも財務戦略に頭を使っていれば、会社を潰すことはなかったかもしれません。

「まさか潰れると思わなかった」という状況も起きにくいでしょう。

数字を常に把握し、いざという時にキャッシュ(現金)をどう確保するかといった最悪の事態への対処法を、日頃から想定して、自社なりの原則を決めておくことが欠かせないでしょう。

特に、企業規模が小さい会社、創業まもないベンチャー企業は、キャッシュが尽きればジ・エンドなわけですから、何より最優先に考えるべきです。

2つ目は「マーケティングこそ社長の仕事」

永守会長は、ベンチャー企業を立ち上げた時、トップがこれだけは他人に委ねてはいけない、というものがあると言います。それは、セールスやマーケティングです。

いくら素晴らしい技術があっても、良い製品があっても、それだけで売れるなんてことはあり得ません。技術や製品の良さだけで、金融機関もお金を貸してはくれません。

あたり前のことですが、売れなければお金は入ってきません。お金が入ってこなければビジネスを続けることもできません。市場で売れるモノを持っていない会社に金融機関もお金を貸しません。

創業してまもない企業にとって、技術や製品よりもマーケティングこそ社長の仕事です。

一にも二にも、三にも四にもマーケティングだと永守会長は話しています。何をどう売るのか、実際にモノを売っていく力、販売力こそが鍵です。

では、誰がセールスやマーケティングをやるのか。経営トップの仕事です。セールスやマーケティングは、売れれば何でもいいわけではありません。

セールスやマーケティング活動にかかる投資を、いかに早く回収するか、投資効率をいかに高めるかまでが仕事です。仮にたくさん売れるとしても、回収状況の悪いところは撤退しなければいけません。

3つ目は「商品粗利は自分の意思で決めるもの」

モノを作って売る。いくらで製造して、どういう価格で売れば採算がとれて利益が出るのか。これを考えるのが経営の基本である。永守会長はそう話します。

私自身もこれまで出版した書籍や『月刊売れる仕組み戦略レポート』でも話してきましたが、中小企業やスモールビジネスが薄利多売モデルで闘っては絶対にダメです。いかに高単価・高粗利な商品サービスを売るかが基本です。

とはいえ、いくら高単価なモノを売るとはいっても、ある程度の相場レンジの範囲内で値付けをすることになるのが現実でしょう。

一方、キャッシュの源泉とも言える商品粗利については、自分でコントロールすることができます。別の言い方をすれば、原価低減やコスト意識です。

「売値はマーケットで決まる、原価は自ら決められる」

このように、永守会長の考えでは、売値は市場で決まり、マーケットプライスであり、競争があるので、思い通りにはならないと言います。しかし、原価は自分たちの努力によって下げることができる。自分たちだけで決められる原価をいかに安くするか。これが利益を出し、キャッシュを確保するための鍵になります。

言い換えれば、中小企業やスモールビジネスが勝負するならば、高単価・高粗利率な商品サービスを価値提供することに集中すべきということ。いかに利益を儲けるかを真剣に考えなさい、という意味ですね。

まとめ

『永守流 経営とお金の原則』というのは、財務や資金調達みたいな話だけではないですね。「利益=キャッシュをどうやって創り出すか・守るか」という、社長・マーケターとしてのマインドを叩き込まれたような気がします。

ぜひあなたのビジネスにも生かしてください。