ニューバランス創業者ウィリアム・J・ライリーの哲学。倒産の危機に瀕していたニューバランスをジム・デイビスが買収した決め手とは。

テレビ東京のカンブリア宮殿で放映されたニューバランスジャパンの特集。あなたもご覧になりましたか?

私自身はランニングシューズもスポーツウェアもナイキばかり。ナイキが好きだとか、他は買いたくないとか、そういう意識はまったくないんですけどね。

記憶をさかのぼれば、昔はアシックスのランニングシューズを履いていたこともあったし。特にこだわりはないんです。

ただなぜか、ニューバランスだけはほとんど買ったことがないんですよね。

妻とたまにドライブがてらアウトレットに行くのですが、ニューバランスの店舗の前を毎回通ります。でもなぜか店舗の中に入ることもしません。うーん、なぜでしょうか。

自己分析してみましたが、どうもわかりません。

強いて言えば、「そもそもブランドや商品の価値を知らないから」が理由なのかも。

事実、昨日のテレビ東京のカンブリア宮殿を見てから気になって、夜風呂に入りながら、ニューバランスについて根掘り葉掘り調べていくうちに、だんだん好きになってきましたよ笑

◾️ニューバランス創業者の哲学

ニューバランスの創業者はウィリアム・J・ライリー(William J. Riley)。

アメリカの靴職人であり、ニューバランスの創業者の一人です。ライリーは1875年にアメリカのマサチューセッツ州に生まれ、地元の小さな靴工場で働いていました。

彼は靴に対する情熱を持ち、製法や素材、デザインについて学び、独自の製法を確立していきました。

1906年、31歳のライリーは、アーチサポートやオーソティックシューズを製造する会社を設立。

当時、多くの人が足のトラブルに悩まされており、ライリーはそれに注目し、足の健康をサポートする靴を製造することを決意。

1972年には、マラソンランナーからの要望を受けてランニングシューズの製造を開始し、世界的なスポーツウェアブランドとして発展していきました。

彼は自分の会社のために全身全霊をかけ、靴づくりに一生を捧げました。

ライリーは1980年に亡くなりましたが、ニューバランスの企業文化や製造方法は、彼の哲学や製法に基づいて今日まで受け継がれています。

◾️顧客との対話、商品への情熱

ニューバランスは創業以来、「顧客の悩みを解消すること」「顧客とのコミュニケーションを通じて商品を育てること」に、人一倍の情熱を注いできたように私は思います。

1990年に設立されたニューバランスジャパンでも、創業当初はアメリカから輸入された商品を日本市場に提供していました。

しかし、2000年代に入ると、より日本市場に適した商品の開発や販売戦略の転換を図るため、独自の取り組みを開始。

渋谷の「エクスペリエンスストア」と呼ばれる店舗では、足のサイズ測定や走り方のチェック、運動のアドバイスなどを行い、顧客一人ひとりにあった商品を提供しています。

また、お客様の足の形や歩き方に合わせて、1つ1つ靴を製造する「ブロックオーダー」は、自分に合った靴があるという満足感を得てもらうことを目指しています。

さらに、日本の職人が手掛ける「MADE IN JAPAN」の商品展開は、世界中のニューバランスファンから支持を受けています。

◾️ジム・デイビスが買収した理由

ニューバランスは、地元コミュニティへの貢献、ランニングイベントのスポンサーなど、地域社会や顧客により近いマーケティング戦略を展開しています。

有名なトップアスリートによるCMやスポーツチームとのスポンサーシップよりも、です。

現在のオーナーであるジム・デイビス(Jim Davis)が、財政的に苦境に陥っており、倒産の危機に瀕していたニューバランス。

彼が1972年に買収した理由も、ニューバランスの靴が地元のランナーたちに愛されている事実を知っていたからです。

マサチューセッツ州にある小さなスポーツ用品店の経営者、ジム・デイビスは、自らもランニングを趣味としていました。

ニューバランスは、独自のアーチサポートや靴底の素材など、靴の品質や機能性に重点を置いており、そのために製造コストが高くなっていました。

また、当時のアメリカでは、輸入品のスポーツシューズが急激に普及したため、ニューバランスのような地元ブランドが苦戦する状況でした。

前任のオーナーが、会社を存続させるために買収者を探していたことも大きな要因です。しかし、「ニューバランスの靴がランナーたちに支持されている」という体験や事実なくして、デイビスは買収・再建を決意しなかったことでしょう。

◾️経営に迷った時の道標はどこにある?

デイビスは買収後も、ウィリアム・J・ライリーから脈々と受け継がれる製品の品質や信頼性へのこだわりを持ち続けました。

競合他社が安価で大量生産するなか、リストラやコスト削減に取り組む一方で、製品の品質や信頼性を守るためのアメリカ国内の自社工場は手放しませんでした。

ランニングイベントのスポンサーになったり、ランニングクラブを開催するなど、消費者とのコミュニケーションを深めることにも注力し、経営を立て直しました。

日本でも世界でも、大手でも中小スモールでも、どんなビジネスや会社であれ、いつでも順風満帆なんてことはありません。

むしろお金の問題、人の問題、事業継承や後継者の問題、新規集客や販売の問題など、経営課題だらけ、悩みだらけかもしれません。

そんな時は、ニューバランスのエピソードを思い出してみてはいかがでしょうか。

すでに目の前にいる顧客や現場から遠くなればなるほど、離れれば離れるほど、経営の難易度は上がり、ビジネスはうまくいかなくなりがち。

ビジネスの原点、ブランドの原点に回帰すれば、突破口は自然と見えてくるはずです。