マーケティング初心者必見!成功と失敗を分けるリクルート式TTPのコツ/『小さな会社の売れる仕組み』著者 久野⾼司氏 × BtoB売れる仕組みの専門家 村上智彦【GENIUS LAB】
ビジネスで成功するために、他社の成功事例を模倣する、いわゆる「TTP(徹底的にパクる)」という手法は多くの人が試みます。しかし、この方法には注意すべきポイントがあります。単純に「うまくいっている例を真似ればいい」と思うだけでは、かえって失敗を招くことがあります。
この記事では、他社を模倣する際の落とし穴と、正しいTTPの実践方法について解説します。
模倣の前に知るべき重要な前提
TTPが効果を発揮するには、「誰に対して商売を設計しているのか」を理解することが不可欠です。例えば、同じカフェであっても、ビジネスマン向けの静かな空間を提供するA店と、子連れのお母さん向けにリフレッシュできる賑やかな環境を提供するB店では、求められるサービスや雰囲気が全く異なります。
B店の成功例を見て、「賑やかなキッズコーナーを作れば売上が伸びる」とA店が真似してしまうと、常連のビジネスマンや学生は「集中できない」と感じて離れてしまいます。結果として、A店は本来の強みを失い、売上を落としてしまうのです。
模倣による失敗の典型例
模倣による失敗は、表面的な部分だけをコピーすることで起こります。具体的には以下のようなケースが挙げられます。
- 顧客のニーズを誤解する
模倣先の事例が成功した背景には、特定のターゲット顧客に対する明確なニーズの理解があります。その背景を無視して表面的な戦略や施策だけを真似しても、異なるターゲット層には響きません。 - 投資のミスマッチ
大きな設備投資を伴う模倣は特に危険です。例えば、昔ながらの銭湯が「最新設備のスパ施設」を模倣してリニューアルした結果、従来の高齢顧客層を失い、新しい若年層も他の競合施設に流れてしまった事例があります。このような投資は、目的とターゲットのズレから生じる典型的な失敗です。 - ブランドの一貫性を損なう
模倣により、従来の顧客が感じていたブランドの魅力が薄れるケースもあります。例えば、静かで落ち着いた空間を重視していたカフェが急に賑やかな演出を取り入れると、ブランドイメージの混乱を招きます。
成功するためのTTPの条件
では、他社の成功例を正しく模倣するにはどうすればよいのでしょうか?以下の3つのステップが鍵となります。
1. ターゲット顧客と目的の明確化
模倣先がターゲットとしている顧客層と、その顧客が求めている価値を深く理解しましょう。同時に、自社のターゲットとニーズが一致しているかを確認します。異なる顧客層に同じ手法を適用してもうまくいく保証はありません。
2. 本質的な価値を追求する
表面的なプロモーションや価格設定だけを真似するのではなく、模倣先が提供している本質的な価値に注目しましょう。その価値が自社でも再現可能であるかどうかを慎重に見極めます。
3. 自社の強みを活かした進化
模倣する際には、自社の強みを活かして独自の進化を加えます。他社の成功例をそのまま取り入れるのではなく、自社のブランドや顧客層に合った形にカスタマイズすることが重要です。
模倣成功のヒント:ジョブ理論を活用する
お客様が商品やサービスを利用する理由には、「目的」や「仕事」があります。この考え方は、ジョブ理論として知られています。例えば、「子連れでリフレッシュしたい」という目的のために利用されるカフェと、「静かな空間で集中したい」という目的のために利用されるカフェでは、そのジョブ(目的)が異なります。
ターゲット顧客がどのような目的を達成するために自社の商品やサービスを選ぶのかを理解することが、成功するTTPの鍵です。
まとめ:模倣するなら「考えてパクる」
他社を模倣すること自体は悪いことではありません。ただし、ターゲット顧客やそのニーズを無視して表面的な施策だけを取り入れるのは危険です。「徹底的にパクる」ならば、以下のポイントを押さえましょう。
- 模倣先のターゲットと自社のターゲットを比較する
- 提供している価値や目的の違いを理解する
- 自社の強みを活かして独自性を加える
これらを実践すれば、模倣が単なるコピーではなく、成功への足掛かりとなるでしょう。