LVMHの経営戦略に学ぶ「5つの視点」。ブランドポートフォリオ戦略と事業リスクを分散して安定成長経営をする方法。
高級ブランド世界最大手、フランスのLVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)が業績好調です。
2022年1月〜6月期は最高益となりました。先日はマクドナルド最高益の秘密を取り上げましたが、LVMHの「ブランド・ポートフォリオ戦略」からも学べることがありそうです。
LVMH、コロナ前比7割増
今回のLVMHの最高益は、コロナ禍だった2020年の3割減益から大きく反転した結果です。
世界的金融緩和により資産価格上昇で富裕層のマネーがブランド品に向かったことで、コロナ前比でも7割増となりました。
LVMHは「ルイ・ヴィトン」「ディオール」「モエ・エ・シャンドン」「ブルガリ」など、75のブランドを要する複合経営をしています。
ブランドを買収し、自社独自の経営戦略方針『ルールブック』を移植することで、営業利益率を28%にまで高めてきました。2021年にはティファニーを買収しましたね。
ブランドポートフォリオ戦略
ブランド・ポートフォリオ戦略についてですが、ファッション・レザー品、ワイン・スピリッツ、香水・コスメ、時計・宝石、セレクティブ・リテーリングの5部門の収益性と事業効率を分析すると、補完関係にあることがわかります。
たとえば、大黒柱のファッション・レザー品は、営業利益率42%、在庫回転率も10回超ですが、流行に影響を受けやすいのが特徴。
一方、ワイン・スピリッツは、土壌づくりから販売まで長期間かかり、在庫回転率は低いのですが、営業利益率は31%と高く、流行や景気変動の影響を受けにくいのが特徴。
香水・コスメは、単価は低いですが、在庫回転率は8.4回と高めで、安定したキャッシュフローを生み出します。
百貨店や免税店DFSなど小売業態のセレクティブ・リテーリングは、営業利益率は一桁で、景気変動の影響を受けやすいものの、ブランド横断的に顧客接点を広げる役目を果たしています。
部門間で互いにキャッシュや利益を補い合うブランド・ポートフォリオ戦略によって、不況にも耐えられる、あるいは、不況からの業績反転が早い、という強さをもたらしています。
私たちはLVMHのように次々とブランドを買収することはできませんが、LVMHのブランド・ポートフォリオ戦略から「事業上のリスク分散」について、5つのポイントを見つけたのでシェアします。
事業上のリスク分散5つの視点
(1)顧客の分散
複数の事業やブランド展開が可能であれば、要するに、顧客ターゲットの分散を考えると良いでしょう。
たとえば、BtoB・BtoCという分散、対象業種の分散、地域の分散、属性やニーズでの分散です。
(2)施策時間軸の分散
事業ごとの営業・マーケティング施策やチャネルでは、短期的にすぐに業績に直結するものと、中長期的にじっくり時間をかけて成果をあげるものを区別しましょう。
目先の今月来月の営業成績ばかりを追い続けて、近視眼的な施策ばかりではなく、半年後や1年後以降を見据えての売れる仕組みづくりや種まきもバランス良く。
(3)価格帯の分散
商品サービスでは、たとえば、低中価格帯で継続課金モデル(サブスクリプション)と、高価格帯の単発型に区別して整理してみましょう。
事業ごとに扱う商品サービスのタイプを分類してみるだけでなく、各事業・各ブランドの中でも複数の商品サービスを扱っている場合には、価格帯や提供形態のバリエーションを持たせられないか考えてみると良いです。
(4)必需品・奢侈品の分散
必需品は顧客にとって絶対になくてはならない商品サービス、奢侈品は必ずしも必要ではないがビジネスや生活にとっての贅沢やプラスアルファの役割を果たす商品サービスです。
必需品の多くはコモディティ化しやすいものが多く、差別化が難しいので、価格や利益率が低くなりがちですが、不況には強いです。
一方、奢侈品は高付加価値で差別化しやすく、価格や利益率も高くしやすいですが、不況時にはコスト削減の対象になりやすいです。
(5)商品型・販売チャネル型の分散
最後に、各事業で扱っている商品サービスや事業上の強みが、商品型か、販売チャネル型かを区別しましょう。もちろん両方強ければ、それに越したことはないですけどね。
たとえば、LVMHのケースでは、「ルイ・ヴィトン」「ディオール」「モエ・エ・シャンドン」「ブルガリ」はすべて商品型ですよね。
一方、セレクティブ・リテーリングのDFSなんかは、販売チャネルを抑えています。
先日、別の記事でも解説したジャパネットの場合は、ラジオ通販やテレビショッピングを抑えるという販売チャネル型です。
今では独自商品やブランドも投入していますが、以前まではずっとメーカーの商品を売っていましたよね。販売チャネル型の典型例です。
以上、LVMHのブランド・ポートフォリオ戦略から、私たち中小企業にも応用できる視点を5つシェアしました。
盤石な経営基盤を持って、安定成長する会社をつくるために、参考になれば嬉しいです。