テスラ・Amazonに学ぶ、事業の多角化戦略の成功確率をUPする2つの鍵とは。

「あなたの商売はなんですか?」

もし尋ねられたら、あなたは何と答えますか?

「私はパン屋をやっています」
「うちは求人広告の代理店です」
「弊社は印刷会社です」

このように自社が属する業界や扱う商品サービスのことを言う人が多いように思います。

しかし、GAFAをはじめグローバルトレンドを見てみると、ちょっと様相が変わってきている感じがしませんか?

たとえば、テスラ。もともとはEV(電気自動車)の開発・製造がメインの事業でした。しかし、現在では太陽光発電といったエネルギー事業や保険事業も手がけています。

Amazonも同様です。エンドユーザー向けの小売事業がメインでしたが、現在では、BtoBクラウドサービス「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)」が事業の柱になっています。

スマートスピーカーの「Amazon Echo」というハードウェアの開発・販売だけでなく、「Amazon Music」などの体験も提供しています。さらには、EVや保険事業も手がけています。

いま世界で伸びている会社は、業界や商品サービスで自社を定義するのではなく、「自社の存在価値・存在意義」で定義しています。

つまり、自社の持つ経営資源を生かせるなら、既存の顧客により一層の価値提供ができるなら、特定の業界や商品サービスにはとらわれないという意味です。

そもそも業界というものは、総務省が定義している業界コードに則っただけのもの。GAFAなどはまったく気にすることなく、次々と業界を超えた新しいサービスを開発しています。

事業の多角化、コングロマリット化へと進んでいるのです。

なぜ彼らには、それができるのか。彼らはどのような方針で参入する業界や投入する商品サービスのジャンルを決めているのか。

私は2つのポイントを見つけました。

1つは、大量の顧客情報や購買行動データを活用できること。

彼らはなんとなく勘や憶測で新規参入する事業を決めるのではなく、既存事業から得られた顧客や消費者行動に関するデータに基づき、人々の不満や不便、欲求や願望を実現しようとしています。

もう1つは、既存事業や顧客行動の前後プロセスを見ていること。

テスラのエネルギー事業や保険事業は、EV本体を動かすためのエネルギー、EVを購入する顧客の安心安全の保証という観点で一貫性があります。事業プロセスや顧客の購買行動に付帯する前後シーンを見ているのです。

これら2つのポイントは、果たしてGAFAやビッグカンパニーだけの話でしょうか。私たち中小企業やスモールビジネスには、関係がない話なのでしょうか。

そんなことはありません。

たとえ、GAFA並のデータ量がなくても、顧客情報を取得することはできます。顧客一人ひとりと対話して、相手のニーズや心理を探ることはできます。アンケート調査などを行うのも良いでしょう。

たとえ、GAFAのような資金力がなくても、既存事業の前後シーンに新たなチャンスを探すことはできます。顧客が購入する前後でどのような体験をしているかを調べて、プラスアルファの価値提供ができないかと模索することはできます。

新規事業は打率1割と言われます。しかし、成功確率の高い、確からしい新規事業のヒントは、すでにある経営資源、すでに目の前にいる顧客にあると言えるでしょう。