ジャパネットの成長戦略8つの秘訣。実店舗型の家業だったジャパネットが2500億円企業になるまでの成功の軌跡。

今日はジャパネットの成長戦略について話します。

2021年度の小売業調査のランキングでは、通信販売の部門で、アマゾンジャパンに次いで、売上高が第2位のジャパネットホールディングス。日経MJの記事によると、売上高2,506億円で前年からの伸び率も4.2%とますます成長中です。

創業者の髙田明氏が、実父の経営するカメラのたかた(有限会社たかたカメラ)から1986年に独立する形で誕生して、今年で36年目。

実店舗型の家業だったジャパネットが2500億円企業になるまでの成功の軌跡をなぞりながら、私たちの売れる仕組み戦略にも生かせる8つの秘訣を解説します。

(1)売る能力を身につける

ジャパネット創業者の高田明氏は、1948年の生まれです。なので、1986年に独立したのは38歳の時でした。

テレビ東京のカンブリア宮殿にご出演されていた時、ご本人は「41歳までホテルや旅館へ出張して、宿泊客の宴会の写真を撮り、即日現像して翌朝写真を売っていました」とお話しされていました。

独立して以降も、実家の家業の元で、顧客と向き合い、販売活動をしていたということです。

独立起業、新規事業立ち上げには、私はまず肉体労働から始めることをオススメしています。

最初からいきなり規模や効率性を追求するのではなく、現場での地道な営業・販売活動によって、売れる仕組みに最も重要な「売る能力」を鍛えることは、すべての基礎となります。

(2)チャネル一点突破する

ジャパネット創業者の高田明氏は、1990年に長崎放送(NBCラジオ)でラジオショッピングへ挑戦。

放送時間中の5分間で50台のカメラが売れ、100万円ほどの売上を達成したことから、ラジオショッピングを主体とした通信販売に業務の専念するようになりました。

この後、テレビショッピングへ展開するのは1994年ですから、約5年間はラジオが中心だったことがわかります。

MBAや本などでマーケティングの勉強をすると、マーケティングミックスとかマルチチャネルとか、最初からあれもこれも施策をやらなきゃいけない気がします。

しかし実際には、事業の成長ステージや資金力によって異なるものです。

現場で得た顧客理解と売る能力を武器として、まずは1つのチャネルへ、お金も時間もノウハウも集中投資しましょう。分散するほど、攻略は遅れます。

2つ目・3つ目に手を出して良いのは、1つ目をきちんと勝ちパターンとして確立できてからで十分です。

(3)DRM型でレバレッジをきかせる

事業拡大を図る時のチャネル選定は、非常に重要な戦略判断です。

ジャパネットの当時の時代背景とは違うかもしれませんが、ラジオ通販を選択したことは初期の成功要因の1つでしょう。

現場で培ってきた顧客理解と売る能力は、基本的に1対1や1対少人数ですよね。あるいは、特定の場所という物理的制約がかかるものです。

チャネル一点突破を考える時、1対多に向けて販売ができ、なおかつ地理的・物理的制約のかからないチャネルを選ぶと良いでしょう。

要するに、レバレッジをかけられるチャネルがオススメということです。

さらに、DRM型(ダイレクトレスポンス型、直接反響型)で効果計測が数字できっちりわかる、PDCAをまわしやすいチャネルや施策を選択するのが、その後の事業成長に効いてきます。

逆に言えば、人海戦術やマンパワー依存、スケールしにくいチャネルや施策はおすすめしません。今後の日本の労働人口の減少、人材獲得の難しさを考えれば、なおさらです。

(4)自分を売る、人間を売る

ジャパネット創業者の高田明氏のあの声。非常に特徴的ですよね。あの声を聴いただけで、一瞬で「あ、ジャパネット!あの人だ!」とすぐにわかりますよね。

営業や販売だけでなく、あらゆるビジネス活動において「人間力」「信用力」は土台です。知らない人、信用できない人からは、買いたくないですよね?

いくら素晴らしい商品サービスでも、それをオススメしている人の人間力、言い換えれば、人柄や情熱、誠実さ、表情などが土台にあれば、お客様はより安心して買いやすくなります。

もっと簡単に言えば、人は自分が知っている人から買いたい、ということです。これは、BtoBでもBtoCでも同じことです。

特に、1対多に向けて非対面でレバレッジを効かせるチャネルでは、セールスメッセージだけでなく、それを誰が話しているのかを堂々と示すことによって、人間力・信用力を感じていただきやすくなります。

商品サービスやオファーが何であれ、言葉だけでなんとか売ろうとするのではないのです。私たち自身が堂々とフロントに立つこと、表に顔を出すこと、遠隔だとしてもお客様の前に立ち続けることによって、「あ、この人知ってる!」の状態になること。これがポイントです。

(5)マルチチャネル展開でスケールする

ジャパネットの成長戦略では、まず長崎放送という地方局のラジオ通販から一点突破しました。

事業拡大を図る時、ただ1つのチャネルから、マルチチャネル展開を考えるでしょう。ジャパネットの場合には、それは1994年のテレビ通販への進出でした。

最初1つ目のチャネル選定においては、1対多に向けて販売ができ、なおかつ地理的・物理的制約のかからない、レバレッジの効くチャネルを選ぶと良いと話しましたね。

DRM型(ダイレクトレスポンス型、直接反響型)で効果計測が数字できっちりわかる、PDCAをまわしやすいチャネルや施策を選択しようという点も解説しました。

マルチチャネル展開する時には、1つ目のチャネルで蓄積した成功パターンやノウハウをさらにスケールさせられる、横展開しやすいチャネルを選ぶようにしましょう。

つまり、流行やトレンドだから、隣近所の他社がやっているから、という理由で、自社にとって脈絡のないチャネルに手を出すのはやめましょう。

あくまでも自社の成功パターンをなるべくそのまま生かせるチャネルを選ぶことです。理由は簡単です。その方が成功確率が高く、成功するまでのスピードも早いからです。

補足ですが、レバレッジの効くこと、DRM型であることは、マルチチャネルの選定においても同じですよ。

(6)カタログDMで顧客を離さない

ラジオ通販からテレビショッピングや新聞広告などのマルチチャネル展開で一気に全国区へ。そして、創業者・高田明氏の知名度も全国区になりました。

現在は、野村證券に勤務を経て継承された息子さんの手腕で、さらなる成長を遂げているジャパネットです。

強化している取り組みの一つに、新規客獲得中心から既存顧客との関係維持への戦略シフトがあります。

ラジオ通販・テレビ通販・新聞広告などのマルチチャネル展開の主目的は、あくまでも新規顧客獲得です。しかし、販売力が強みのジャパネットとは言え、どんな商品サービスでもサクサク売れるかというと、そうではありません。

新規顧客の獲得は、すべてのビジネスにとって最も難しい課題です。ジャパネットの場合、テレビショッピング番組そのものにファンも多く、既存顧客のリピート購入・ファン化も兼ねているとはいえ、既存顧客をリピーターへ導く仕組みはありませんでした。

息子さんの代になって、通販カタログを郵送DMとして定期送付することによって、「テレビショッピングや新聞広告をまた見てください!」だけに依存しない、既存顧客のくり返し購入を促進する仕組みを定着させました。

補足ですが、デジタルやオンライン一辺倒の現在でも、紙の郵送物・販促物は実はとてもパワフルです。

販売促進費の投資対効果ROI・ROASとしては、郵送DMは相当に効果的ですよ。私たちも既存のお客様向けにキャンペーンを企画し、販促の郵送DMによってお知らせしています。

(7)メンテナンスで顧客を離さない

ジャパネットのトップが息子さんに代替わりしてから、既存顧客を離脱させない仕組みを強化しています。通販カタログの郵送DMはその1つですが、他にもう1つあります。

それは、お客様が購入した商品、特に家電製品の故障・不良を修理するメンテナンスサービスをジャパネットで受けるようにしたことです。

以前は商品を販売して終わり、だったわけですが、故障・不良への対応、さらにはコールセンター体制の充実により不満・要望を把握することで、既存顧客のお困り事や不満足を放置させない仕組みを作りました。

顧客が離脱する理由はいくつかありますが、一番は企業側・販売者側が顧客の商品購入後に無関心・知らんぷりであることに原因があります。適切なタイミングで適切な対応ができませんね。

修理メンテナンスをジャパネットで受けることによって、お客様の側からタイミングも適切な対応も手が上がる仕組みを作ることに成功しました。

さらには、家電メーカーへのフィードバックや自社商品の企画開発、販売時のオファーやセールスメッセージの改善にも反映させることができるわけで、メリットばかりです。

(8)高単価・サブスク商品を導入する

以前のジャパネットは、メーカーの商品を仕入れて、テレビショッピングや新聞広告などで販売をしていました。数千円から数万円、高額でもノートパソコン20万円くらいの価格帯がメインだったでしょうか。

しかし、現在では、もっと高単価な商品も売っています。メーカーや他社とのタイアップのもと、ジャパネット限定として企画販売しているんです。日本や世界を巡るクルーズ船旅行プランはその1つですね。

また、サブスク商品も拡充させています。以前はローヤルゼリーのサプリや南アルプス天然水のウォーターサーバーくらいでした。現在では、全国から肉や果物の厳選名産品が毎月届く定期便など、ジャパネット自社の独自商品として、様々な定期便コースを企画提案しています。

結果、ストック型の収益の柱がより一層強化されるだけでなく、サブスク商品の最大の特長「商品サービス形態そのものに顧客維持のフォローが組み込まれている」ことによって、さらに安定成長の経営基盤が盤石になっています。

以上、ジャパネット成長戦略を特集しました。

新規集客・新規顧客獲得に意識が寄りがちな私たちに、いかに既存顧客のリピート購入してもらうか、いかに既存顧客を離脱させないか、その重要性も教えてくれていますね。

ジャパネット成長戦略のエッセンスを、自社にどのように応用できるでしょうか。ぜひ実践していきましょう!