シリコンバレーのIT企業が取り組む、女性技術者の採用強化・男女格差問題への解決策とは

エンジニアの人材不足が深刻なIT業界。女性技術者の採用強化に取り組む企業が世界的に増えています。

たとえば、メルカリは女性限定の育成プログラムを作り、女性技術者の採用増に成功しています。CEOが理系女子学生向けの奨学金財団の設立もしています。

また、Amazonは12-13歳の少女を対象に、アプリ開発のエンジニア育成プログラムを展開しています。

一方で、2017年にはシリコンバレーで男女の賃金格差解消に向けた議論が活発化しました。

2021年時点でもテクノロジー職の女性比率は、たとえば、Microsoftが24%、Googleが25%、Appleが24%と男性比率が非常に高い傾向です。

米フェンウィック・アンド・ウエスト法律事務所が考案した経営陣の女性比率などを基に算出する「ジェンダー多様性スコア」では、シリコンバレーの上場企業150社の平均スコア216は、S&P100の263を大きく下回る結果です。

Googleでは2017年から続いてきた男女の賃金格差をめぐる集団訴訟があり、約160億円の和解金を支払う結果になりました。

今年6月にはテック業界の女性リーダーの象徴、米メタ(旧Facebook)のシェリル・サンドバーグCOOが退任を表明するなど、IT業界における男女差問題は今、注目のテーマです。

Indeed日本法人の調べでは、男性は「労働時間が長い」「業務量が配慮されない」「休暇取得の理解が得にくい」などの働き方の不満がメイン。

女性は「昇進・昇格しにくい」「給料が低い、昇給しにくい」「仕事を任せてもらいにくい」「実力で評価されにくい」などの評価に不満を持つ声が多いようです。

IT業界の人手不足問題、男女格差や女性活躍の問題を取り上げるニュースは多いですが、私が感じるのは、さまざまな問題を切り分けて考えたらどうかということ。

たとえば、課題別で切り分けると、、

「IT技術者全体の母集団をどうやって増やすか、その一環で女性のIT技術者をどうやって増やすか」という課題、「入社後の働き方、評価制度、昇進昇格の基準をどのように改善するか、その一環で男女ともに納得感のある状態をどうやって作るか」という課題の2つがあると思います。

要するに、採用と人事を切り分けるということです。

本来は一貫した視点で取り組むべきなんですが、問題解決を考えるときに、全部まとめてどうしようと悩んでいても前に進まないですし、はっきりしません。

今どの問題を解決しようとしているのかを絞って考えると良いでしょう。

前者の「IT技術者全体の母集団をどうやって増やすか、その一環で女性のIT技術者をどうやって増やすか」という採用についても、さらに分解できます。

「ITや理系分野に興味を持つ人をどう増やすか・その中で女性をどう増やすか」という社会的な視点、「いかにIT技術者を自社へ惹き寄せるか・その中で女性をどう増やすか」という一企業の視点があります。

日本では、そもそも大学で理系進学を選ぶ女性割合が少ない実情があります。

理系じゃないと、IT技術者にはなれないかというと、決してそんなことはないと思います。

ただ、AI・機械学習・データサイエンスの分野で業界リーダークラスにいる私のクライアントを見ていると、結局現場で活躍できているのは理系出身の人ばかり。

となると、理系人材を欲しがるのは自然なこと。もともと理系女子は母数が少ないので、女性のIT技術者が少ないのは何もおかしくないと私は思います。

一方で、社内でIT技術者に対する女性割合が少ないという話と、女性技術者が活躍しにくい・納得感が得られない環境だという話は、別のことだと私は思います。

女性割合が多かろうが少なかろうが、女性技術者が納得感を持って活躍できる環境を整えていくことは、企業の責任だと思います。

あるいは、女性技術者が活躍しにくいならば、何が叶えられて、何が叶えにくいかを、採用の時点であらかじめ伝えておくべきでしょう。

目先の人手不足をなんとかしたい焦りから、とにかく及第点以上なら誰でも彼でも入社させればいい、という考えは、自社の首を締めるだけです。

IT業界の女性採用・女性活躍に関する話は、他業界にも一定あてはまるテーマです。

海外や日本のIT企業が何か先進的な取り組みや改善策をとっているニュースを見たら、それは具体的にどの問題解決を狙っているのかを区別して、そのエッセンスを自社にどう応用できるかを考えてみると良いでしょう。