生命保険会社は営業社員の「大量採用・大量離職」という悪しき慣行から脱却できるか

生命保険会社が、営業社員の新規採用を減らすようです。大量に採用し、短期に大量の離職者を出してきた慣行を見直したいのが狙いとのこと。

たとえば、日本生命や第一生命の新規採用人数は、10年前と比べると、すでに2〜4割程度減少しています。保険商品の販売チャネルは、各社の営業社員による新規契約が6割程度を占めますので、営業人員体制をどうするべきかは重要な事案です。

大量採用、大量離職という慣行は、別に最近のことではなく、ずーっと変わらずに通してきたものですから、なぜ今のタイミングで見直す必要が出てきたのか。その背景や経緯が気になりますよね。

短期間で未経験者を育てて、厳しい販売目標を課すスタイルが問題?

いや、営業・販売の仕事で、数字と向き合わないなんてあり得るでしょうか。新規営業じゃなかったとしても、既存顧客とのリレーション重視だとしても、何かしらの行動KPI、追加販売のための商談数などの数字は当然見ますよね。マネジメントのあり方には改善点があるのかもしれませんが、数字から逃げることはできません。

既存顧客とのリレーションで業績維持できるモデルでしょうか?

いや、新規契約を獲得しないと保険会社の業績は伸びていきませんよね。プラン変更などはあるとしても、新規依存の収益モデルだと思います。余談ですが、ここでは保険料の運用益はちょっと横に置いておきましょう。

定着率が上がってきたから、新規採用は抑えても大丈夫ということでしょうか?

事実、日本生命のケースでは、入社25ヶ月後の在籍率は、1999年には20%だったのが、2021年には58%まで改善しているそうです。大手各社もいまは50〜62%くらい。以前、入社2年で5人に4人が辞めていたっていうのも驚きですけどね笑

まったく未経験の人を採用・教育して、短期的に売れる営業へ育てるよりも、短期的にはなかなか売れなくても、時間や手間をかけて売れる営業社員へ育てていく方が、経済合理性が高いという判断なのでしょうか?それはあるかもしれませんね。

「複雑な人生設計にどんな保険が必要なのかは専属の職員によるコンサルティングが不可欠だ」と各社が主張するように、未経験で入社して間もない人が、保険商品の理解、人生設計の知識、顧客理解、営業やコンサルティング技術をパパッと身につけられると考える方がおかしいと思いませんか?高い数字や目標を課すなら、なおさらですね。

営業社員の採用や育成、定着に苦戦している会社の多くは、新規問合せや商談の創出を営業マターにしています。飛び込み訪問然り、テレアポ然り、縁故巻き込み然り。

逆に、売れる仕組みの全体設計図をきちんと組んで、営業とマーケティングを役割分担できているところは、組織づくりも安定成長できているように私は思います。

なぜなら、マーケティングチームが飛び道具を駆使して創り出す、問合せや商談を決める少数精鋭の営業担当だけで成立するからです。営業担当を山ほど採用する必要はありません。

マーケティングが弱い会社、マーケターチームのない会社は、営業が自分で問合せや商談をゼロからつくり出さなければなりません。すべて営業マターです。ここが、辞める最大の原因ですよね。

属人的な営業依存スタイルでやってきた会社は、今後ますます苦しくなるでしょう。保険会社も、売れる仕組み、マーケティング・ファーストな体制にシフトできるかどうかが鍵です。