社長の投資家マインドとは。新規事業や売れる仕組みづくりの現場経験なく事業継承した社長が、会社経営で苦戦する理由。

「社長は、投資家のように考えなさい」

私がまだ25歳だった頃、たまたま参加した経営者講演会で聞いたことを覚えています。おそらく当時は、今以上に表面的な意味でしか理解していなかったでしょう。

25歳と言えば、約15年前のこと。あなたは何をしていましたか?

私は学生時代から続けていた雑誌広告の完全歩合制営業の仕事から、セールスライティングやマーケティングを武器とした売れる仕組みづくりの仕事へと完全にシフトした時期です。

テレアポのトークスクリプト改善や新人研修トレーニング、そして進学塾や美顔器メーカー、電子機器販売会社、美容室向けコンサル会社など、幅広いクライアントの新規集客や新規開拓のための仕組みづくりをお手伝いしていました。

あくまでも私の知識やスキル、労働力に依存する”ひとりビジネス”の範疇です。

目の前の仕事でなんとか成果を出したい、クライアントから褒められたいと、私なりに必死で学び、悪戦苦闘をくり広げていました。

もちろん”ひとりビジネス”が悪いわけではありませんよ。

自分がマーケターやセールスライターとして技術を磨き、現場実務でクライアントとともに闘い、なんとか実績を積み上げていく時間。

それは、その後「投資家のように考える」ための基礎になっていると感じています。

◾️「投資家のように考える」とは

40歳になった今、私が思う「投資家のように考える」とは、ただ単に、事業ポートフォリオと資金配分を管理することではありません。

たとえば、株式投資であれば、短期か長期か、新興か成熟か、成長性か安定性か、株価上昇か配当性向か。セクターや個別銘柄ごとに数字や情報を見て判断しますよね。

もちろん自社のビジネスや事業ポートフォリオにおいても同様ですが、もうちょっと各事業や各ブランドのミクロまでウォッチしないといけません。

新規事業と既存事業の資金配分は、会社を潰さないために欠かせません。

また、各事業がテストマーケティング期の手探り段階なのか、広告宣伝投資にアクセルを踏み込んで顧客資産を拡大する段階なのか、顧客資産からの安定利益やキャッシュフローを確保する段階なのか。

さらに、各事業の売れる仕組みの設計・構築・運用状況、運営チームやメンバー編成は、各事業の成長シナリオを支えられる状態になっているか。

このあたりがチグハグだと、なかなかうまくいきません。

アクセルを踏み込むべきタイミングで目先の利益や安心を優先して躊躇すれば、成長機会を逸します。

事業成長の段階に合った売れる仕組みやチーム体制になっていなければ、いくらお金を投資しても、支える側が支えきれずに破綻する危険性もあります。

このように社長が投資家マインドを持つには、ご自身が現場で新規事業を作ったり、売れる仕組みを設計・構築・運用したり、マーケターチーム育成に取り組んだりして、初めて感覚的につかめるものではないかと思うのです。

◾️2代目3代目社長によくある問題

たとえば、2代目3代目社長のように、先代から事業継承した人の中には、、

「新規事業や売れる仕組みをゼロから挑戦した経験がない」
「セールスやマーケティングの実務経験がない」
「現場で数字と向き合った経験がない」

現場経験が乏しいままに社長になった人が結構多いような気がします。

すると、「社長の投資家マインド」を、人員配置と権限移譲で社員に任せてしまえばいい、事業ポートフォリオと資金配分の管理だけに徹すればいい、という意味で解釈してしまいがちです。

各事業や各ブランドのミクロな部分と向き合おうとしない、そもそも感覚的に理解できない、という感じなのです。

うまくいっている時は良いのですが、業績が厳しい局面ではどうしたら良いのかわからなくなってしまいます。打ち手がチグハグになったり、大胆に行くべきところで妙に慎重になったり。

まぁ今日の話は、たまたま偶然に、私が20年間マーケターやセールスライターとして経験を積んで、自社やクライアントの新規事業や売れる仕組みづくりを日夜やっているから、そう感じるだけかもしれませんけどね。

それでも経営者の仕事は、経営シミュレーションゲームのようにダッシュボード画面を見て、指示だけ出していれば成立する類のものではない。

新規事業や売れる仕組みづくりの現場経験による裏付けなく、社長は優秀な投資家にはなれない。

私はそう思います。あなたは、どのように考えますか?