営業ヒアリングの極意!売れる営業マンが実践する4ステップの質問術/営業サポート・コンサルティング株式会社 代表取締役 菊原智明

営業の現場では「営業はヒアリングが9割」という言葉をよく耳にします。しかし、実際には「何を、どの順番で、どう聞くべきか」が具体的にわからないまま、形式的な質問を繰り返してしまう人も少なくありません。

特に営業初心者の多くは、会社で用意されたヒアリングシートを上から順番に埋めていくことを優先しがちです。その結果、お客様からは浅い情報しか得られず、ライバル他社と似たような提案になり、最終的には価格勝負に陥ってしまいます。

本当に売れる営業は、ヒアリングの「質」と「深さ」が違います。お客様が話しやすい雰囲気を作り、本音を引き出し、提案の精度を高めるためのヒアリングこそが、受注率を大きく左右します。

この記事では、住宅営業で売れずにクビ寸前から4年連続トップになり、78冊もの営業本を出版した人気コンサルタント菊原智明氏の「売れるヒアリング4ステップ」をもとに、営業初心者からベテランまで活用できるヒアリングの極意を解説します。

ステップ1:承諾を取って心の扉を開く

ヒアリングの第一歩は「承諾」です。これは単に質問を始める前に「いくつか質問してもいいですか?」と尋ねることを意味します。この一言があるかないかで、その後の会話の深さは大きく変わります。

お客様は、自分がこれから質問されることを知って心の準備ができ、心理的に「はい」と答えることで無意識に本音を話しやすくなります。

承諾の応用編として「必要なことだけ質問しますのでよろしいですか?」と付け加えると、お客様は「必要なことなら嘘はつけない」という心理になり、より正直な情報を提供してくれます。

この承諾は単なる形式ではなく、信頼の土台作りです。相手が「はい」と言った時点で小さな約束が成立し、その後の会話の流れがスムーズになります。

営業が苦手な人ほど、この最初の承諾を省略してしまいがちですが、これは成約率を高める重要な儀式なのです。

ステップ2:質問の順番を組み替える

多くの会社では、ヒアリングシートに予算・時期・家族構成などの項目が並んでいますが、その順番は必ずしもお客様が答えやすい順ではありません。売れる営業は、この質問の順番をお客様が話しやすい流れに組み替えます。

例えば「お休みの日は何をして過ごされていますか?」というような軽い雑談から始めると、お客様は緊張せずに話を始められます。ここで得られる情報は単なる雑談ではなく、提案内容に直結するヒントの宝庫です。

例えば「ゴルフをやっています」と言われたら、庭のアプローチスペースや室内のパター練習コーナーなど、具体的で魅力的な提案に発展できます。

逆に、予算や契約時期などの核心的な質問から始めると、お客様は身構え、表面的な回答しか得られないことが多くなります。ヒアリングは相手の心をほぐしながら本音を引き出すためのプロセスであり、そのためには「会話の順番」が極めて重要です。

ステップ3:展開で会話を深掘りする

質問に対するお客様の答えを、ただメモして終わりにするのは浅いヒアリングの典型です。売れる営業は、答えをきっかけに会話を広げていきます。

例えば「ゴルフをしています」と聞いたら「スコアはどれくらいですか?」「得意なクラブは何ですか?」と質問を重ね、相手が楽しそうに語れる領域に入ります。

ここでのポイントは、単に趣味の話を続けるだけでなく、そこから提案につながる要素を見つけることです。

「庭にアプローチ練習スペースがあると便利ですね」「雨の日でも室内で練習できるコーナーを作りましょう」といった提案は、お客様の心に強く響きます。

この展開の技術は、他社との差別化にも直結します。浅いヒアリングではどの営業も似た提案しかできませんが、深く掘り下げた会話からは唯一無二の提案が生まれます。

その結果、お客様は「この人は自分をよく理解してくれている」と感じ、価格以外の価値で判断してくれるようになります。

ステップ4:確認で信頼を固める

深掘りした会話の後は「確認」が必要です。「先ほどのお話だと、庭にアプローチスペースがあると良いということでしたよね」「奥様は保存用のストックスペースを3つくらい置けると便利ということでしたよね」というように、お客様の発言を要約して確認します。

これには2つの効果があります。第一に、聞き間違いや勘違いを防ぎ、提案の精度を高める効果。第二に、「あなたの話をきちんと理解しました」というメッセージを相手に伝える効果です。

この「理解されている感覚」は、営業における信頼形成の核心です。多くの営業はヒアリングを聞きっぱなしにしてしまい、この確認ステップを省略しますが、それは非常にもったいないことです。

確認によってお客様は「この営業は私の話を大切にしてくれる」と感じ、心理的距離が一気に縮まります。

4ステップを繰り返すことで深まる信頼

承諾→質問の組み替え→展開→確認という4ステップは、一度だけで終わりではありません。面談や訪問の中で、何度もこのサイクルを回すことで、お客様は飽きることなく、より深く本音を話してくれるようになります。

このサイクルを意識的に繰り返すと、会話が自然に深まり、提案もより的確になります。

また、この手法は営業経験の浅い人や質問が苦手な人でも実践しやすいのが特徴です。「休日は何をして過ごしていますか?」というシンプルな質問から始めて、興味を持って深掘りし、確認をする。

この流れを繰り返すだけで、ヒアリングの質は格段に向上します。

営業は情報戦です。お客様が自分のことを話した量と質が、そのまま提案の質と成約率に直結します。商品説明や会社案内に時間をかけるよりも、まずはお客様に話してもらうことが何より大切です。

営業の質問力を磨くために

営業の質問力は、一朝一夕で身につくものではありません。しかし、今回紹介した4ステップを意識して日々の商談に取り入れることで、確実に向上します。

特に重要なのは「お客様が話しやすい雰囲気を作ること」です。趣味や興味のある話題は、そのための最良のきっかけになります。

会話が盛り上がれば盛り上がるほど、相手はあなたに心を開き、深い情報を提供してくれます。そしてその情報こそが、他社にはできない独自の提案を可能にするのです。

営業はヒアリングが9割と言われますが、その本質は「お客様の話をどれだけ深く聞き、理解し、提案に反映できるか」にあります。今日からこの4ステップを実践し、成約率の向上とお客様からの信頼獲得を目指しましょう。

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