日本ハムが2つの独自ECサイトをローンチ!D2C事業を儲かるビジネスに育てる5つの基本

日本ハムが4月に2つの独自ECサイトを立ち上げました。

1つは、「Table for All(テーブルフォーオール) 食物アレルギーケア」。2022年2月に開始した食物アレルギーに関する情報や対応レシピ、オンライン栄養相談といったサービスに、独自ECサイトを追加したものです。米粉パンやロースハムが並んでいます。

もう1つは、「Meatful(ミートフル)」。酒や肉との食べ合わせ、北海道産ビールやハム、ソーセージのセットなどを販売しています。

「現在は自社開発商品だけだが、将来的には他社商品も取り扱っていきたい」と日本ハムの新規事業推進部長は、意気込んでいるようです。

日本ハムのように、コロナを機にD2Cに取り組む会社は非常に増えていますが、売上規模や知名度ではなく、「利益」「儲かっているか」という点では、うまくいっている会社はごく少数です。

私はBtoBビジネスの売れる仕組み戦略がメインですが、BtoCビジネスのD2C立ち上げやモデルチェンジをご用命いただくこともあります。そんな私の経験から、D2Cでうまくいく会社とうまくいかない会社の違いは、5つの基本で語れると考えます。

1つ目は、誰向けか。

ターゲットがわかりやすく、見えやすいかということです。日本ハムのTable for Allを見てみると、母親や子どもの写真がたくさん掲載されていて良いと思います。

2つ目は、どんな価値提案か。

ターゲットに対して、要するにどんな変化や問題解決を提供するのか、コンセプトを明らかにするということです。

日本ハムのTable for Allでは、ターゲットである母親に対して、子どもの健康を守る・泣いている我が子を見たくないという感情、そのために食物アレルギーの信頼できる情報源と安心して食べられる食品を選びたいという気持ち、という価値提案を主眼に置いています。

3つ目は、目玉商品はあるか。

価値提案のコンセプトを具体的な商品サービスで表現することで、新規顧客からの注目や接点を作り出すのが狙いです。日本ハムのTable for Allでは、米粉パンを目玉として新規顧客を引き寄せたいのだと思います。

4つ目は、チャネルはあるか。

ターゲットである乳児・幼児を持つ母親へリーチできる広告媒体やメディアがあるかどうか。さらに、リーチできれば何でも良いわけではなく、ターゲットからの信頼を得やすいチャネル、短期的な効果計測やPDCAをまわせる集客施策かどうかも基準となります。

5つ目は、リピートの仕組みはあるか。

ECやD2Cに関わらず、ビジネスを安定成長させる上で、最も重要な視点です。

新規顧客の獲得にはたいてい広告宣伝の先行投資がかさみ、目玉商品単独では赤字になることが普通です。日本ハムのような単価の安い商品ジャンルならなおさらです。

先行投資を回収して、儲かるビジネスやブランドに育てるには、リピート性は絶対に欠かせない要素です。

日本ハムは、私たち中小ビジネスとは違い、潤沢な予算やリソースを投資できるでしょう。

そのため、中小ビジネスとはロジックが異なるかもしれませんが、私が2つの独自ECサイトを見る限り、ターゲット、コンセプト、目玉商品は練られていて良いと思います。

チャネル選択も、様々な広報PR活動から認知度UP、ECサイト名・ブランド名・商品名での指名検索を増やして、Googleリスティング広告で獲得するというプロセスで機能すると思います。

ただし、(5)のリピート性については、おそらくECサイトを2025年度に黒字転換して、2030年度に年商100億円を目指す上での壁にぶつかると思います。

とにかく単価の安い食品を売っていますからね。すでにトライされている定期便の提案や役立つ情報コンテンツ配信だけでなく、週次で新しいキャンペーンを企画して、顧客向けのメールマガジンでどんどん提案していくような機動性が欲しいところです。

つまり、一度購入した顧客に忘れさせない・退屈させない仕組みをつくるのが、売上だけでなく、きちんと利益を出していくためのポイントになると思います。

そして、この機動性というのは、大手企業が最も苦手とするテーマなんですよね。。。

日本ハムの独自ECサイトは4月に立ち上げたばかりですので、意識の比重としては広報PR活動などの新規顧客獲得にだいぶ寄るとは思います。

ただ、まずは新規顧客の獲得だけに集中しよう、その次に既存顧客へのリピートに取り組もう、のように線引きはできませんね。せっかく獲得した新規顧客も放っておけばあっという間に忘れられますから。

BtoBビジネスでも本質は同じです。

私たちも、新規顧客ばかり追ってないで、既存顧客へのフォローや追加提案がないがしろになっていないか、注意しなくてはいけませんね。