【やり抜く力 GRIT(グリット)】アメリカの心理学者アンジェラ・ダックワースが提唱した、人生やビジネスの成功を実現する力とは。

『やり抜く力 GRIT(グリット)』を読みました。日本では2016年に出版された本です。

アメリカの心理学者であるアンジェラ・ダックワースが提唱した、成果を出し続けるための力である「グリット」について解説した一冊です。

この書籍では、人々が成功するためには天才ではなく、努力と継続する力が重要であることを心理学的な観点から示しています。

本の内容を3つのポイントで整理すると、、

[ポイント1]情熱と目標に向かう努力

グリットの中核は、情熱と長期的な目標に向かって一貫して努力し続けること。短期的な成功や承認にとらわれず、情熱を持ち、目標にコミットし、困難に立ち向かう必要がある。

情熱が個人の行動を導き、困難にも負けずに努力し続ける力を生み出し、成果を上げる。

[ポイント2]努力を持続させる要因

グリットを発展・持続させる要因は、「成長マインドセット」と「目標設定と計画」。

成長マインドセットとは、自己成長を信じ、失敗や挫折を学びの機会ととらえる心の姿勢。また、目標設定と計画は、具体的な目標と綿密な計画で、努力を持続させる力を養うこと。

[ポイント3]困難や挫折への対処

成功への道には必ず困難や挫折が伴う。困難を乗り越えるには、ポジティブな楽観性を持ちながら、困難を「成長のチャンス」ととらえること。

また、仲間や指導者との協力やサポートを得ることで、困難を乗り越える力を高めることができる。

雑誌広告代理店でのフルコミ営業時代

私は書籍『やり抜く力 GRIT(グリット)』を読んで感じたのは、私にとって最初の仕事である雑誌広告代理店での完全歩合制営業の時の経験です。

CanCamやDomani、Soupといった有名女性ファッション誌の広告枠を販売する仕事。

1枠あたり15万円〜50万円。大学や短大、専門学校、スクール向けに生徒募集のための広告を販売する仕事でした。

販売価格の30%が成果報酬になる契約内容でしたが、何十時間、何百時間働こうが、成果があがらなければ、報酬はゼロ。それが、完全歩合制のルールでした。

その会社は、立ち上げてまだ3年か4年目、社員数名のベンチャー企業。年商はまだ4千万円程度。

一般に営業の仕事というと、当時はまだまだ古い考え方が当たり前の時代でした。

気合と根性の精神論9割か、朝から晩までテレアポや客先訪問をするか、お客にペコペコ頭を下げてのお願い営業をするか。

でも、雑誌広告代理店の社長は、違う考えの持ち主だったのです。

◾️売れる仕組み通りにやったのに...

彼は、営業や販売活動を「売れる仕組み」として捉えていました。

見込み客との接点を作るところから、契約・受注、リピートしてもらうまで、一貫したプロセスがあり、一つひとつに明確なやり方やルールが決まっていました。

たとえば、テレアポにはトーク原稿があり、商談の進め方にも台本がありました。いつどのような質問をするか、その答えにどんな言葉を返せばいいか、明確に決まっていたのです。

誰がやっても、短期間に高確率で成果をあげられる方法が隅々まで確立されていました。

つまり、私たち営業メンバーに求められることは、その方法を忠実に実行することだけ。とてもシンプルでした。

最初の2ヶ月、私は社長に教えられたとおりのテレアポ原稿、商談の台本どおりにやりました。

でも、約500時間の営業活動をしたにも関わらず、雑誌広告は1件も売れませんでした。1円すら報酬を稼ぐことができませんでした。

◾️エジソンの研究実験と同じこと

悔しかった私は、自分のテレアポや商談の音声を録音して、すべて紙に書き出してみました。そして、社内で一番売っているトップセールスの音声もこっそり録音して、比較しました。

その結果、同じ原稿、同じ台本をもとに営業しているのに、何十箇所もの違いがあったのです。

「自分では台本どおりにやっていると思っても、結構ズレるものだな」

大学で構造力学や都市工学を専攻していた私は、広告やマーケティングなんてまったくの無知。

社長や先輩から熱く指導を受けると同時に、毎日書店に通っては足がガクガク震えるまでビジネス書を立ち読みしたものです。営業やマーケティング、販売心理学の本を手に取りました。

毎週末には、住んでいた寮近くの東京メトロ丸の内線の茗荷谷駅近くのサイゼリアに、ドリンクバーとミラノ風ドリアで開店から閉店まで居座りました。

そして、無我夢中でセールスライティング(集客や販売のための言葉や文章をつくる技術)を勉強しました。社長の作った台本の裏に隠されたメカニズムを理解したかったからです。

まるでエジソンが数千や数万回くり返した科学実験のように、仮説・検証・改善をくり返す毎日。

その結果、3ヶ月目には40万円、4ヶ月目には100万円を超える報酬をいただけるようになり、13ヶ月連続で営業成績トップを維持することもできました。

◾️やり抜くしぶとさこそ

営業や販売の成功は、センスや才能、気合や根性で決まるわけではなく、一貫した「売れる仕組み」なのだということを学びました。

誰がやっても短期間で成果が上がるようになり、きちんと知識やスキルを学んで改良すれば、さらに売れる精度を高めることができるということも経験しました。

売れる仕組みの勝ちパターンとは、コンパスの役割を果たすようなものです。

コンパスがあることで、自社が目指す売れる仕組みの完成図が見える化され、誰がいつ何をどのように考え、実行していけばよいのかが定まります。

成功を実現する最後のワンピースは、うまくいくまでやり抜くしぶとさかもしれませんね。

私が雑誌広告のフルコミ営業をやっていた頃、同じ時期に入ったメンバーは数日や数週間で続々と辞めていきました。

「こんな仕事、自分には向いていない」「こんな商品サービス、売れるわけない」と投げ出すのは、本当に一瞬、簡単なことですよね。

それではなぜ、私は辞めなかったのか。なぜ、毎日書店でヒントを探したのか。なぜ、サイゼリアにこもって勉強や研究をしたのか。

結論、超の付くような優等生や秀才くんたちに囲まれた中高大時代を通して、私は強い劣等感を持っていたからだと思います。

「いったい自分はどうやって生きていけばいいのか」と悩み、「なにか行動を起こして変わらなければ」となんとか自信を持ちたかったんだと思います。

だからこそ、決して得手とは言い難いフルコミ営業の仕事でしたが、簡単に投げ出したり、逃げ出したりしなかったのでしょう。

稼げる稼げない・売れる売れないという以上に、自分の生きる道に出会うチャンスかもしれないと無意識に捉えていたのではないかと思います。

当時の私には、そんな感情が「グリット」だったんじゃないかと今では感じています。情熱とは、理屈を超えた感情なのかもしれません。

結局、やり抜くしぶとくこそ。あなたの根源となる感情はなんでしょうか?

自問自答する価値はありそうです。

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