元リクルートNO.1が教える「売れる営業」になるための第一歩/有限会社ピクトワークス 代表取締役 渡瀬謙

営業という仕事をしている以上、「もっと売れるようになりたい」「営業成績を上げたい」という思いは誰しも抱くものです。しかし、多くの人が「具体的に何をどうすればいいのか」が分からず、闇雲に頑張ってしまいます。

その結果、時間と労力をかけても成果が出ず、やる気を失ってしまう人も少なくありません。

実は、売れる営業になるための道筋は想像以上にシンプルで、しかも短期間で成果が出る場合があります。

元リクルート社員で、営業成績ゼロからわずか4ヶ月でトップセールスへと駆け上がった営業トレーナー・渡瀬謙氏によれば、「売れる営業に変わる瞬間は、なだらかな成長曲線ではなく、ある日突然垂直に近い角度で成果が伸びる瞬間が訪れる」のだそうです。

そして、その“ジャンプ”を引き起こすきっかけは、営業プロセスの中の「たった1つか2つの改善」にあるといいます。

営業プロセスを6つに分けて弱点を特定する

渡瀬謙氏が提唱するのは、営業の一連の流れを6つのステップに分解し、自分の得意・不得意を客観的に把握する方法です。

その6つとは、

①新規開拓(アポイント獲得)
②アイスブレイク(信頼関係の構築)
③ヒアリング(顧客ニーズの把握)
④プレゼンテーション(提案・商品説明)
⑤クロージング(契約・受注)
⑥フォロー(継続的な関係構築)です。

売れていない営業パーソンでも、実は6つのうち平均75%はできていることが多く、成果が出ない原因は残り1〜2つの“穴”にあります。特に多いのが、後半のクロージングや商品説明に自分の弱点があると誤解してしまうケースです。

多くの人は「押しが弱いから契約が取れない」「説明が下手だから売れない」と思い込みますが、実際に成果を妨げているのはもっと前半のステップ、すなわちアイスブレイクとヒアリングにあるのです。

営業成績を左右する“前半戦”の重要性

アイスブレイクは単なる雑談ではありません。顧客が心を開き、こちらの話を受け入れる準備を整えるための重要な工程です。この段階が不十分だと、どれだけ商品説明を丁寧に行っても相手は耳を傾けてくれません。

逆に、前半でしっかり信頼を築けていれば、多少言葉に詰まっても相手は真剣に聞いてくれます。

そしてヒアリングは、単なる質問項目の消化ではなく、「この顧客は本当に自社の商品を買うべき人なのか」を判断するリサーチの場です。

多くの営業は「売ること前提」でヒアリングを行ってしまい、顧客に“誘導されている”と感じさせてしまいます。その瞬間、相手は本音を言わなくなり、結果として提案も響かなくなります。

ヒアリングは“売るため”ではなく“見極めるため”

渡瀬謙氏は、ヒアリングを「顧客が自社商品を買うべきかどうかを見極める作業」と位置づけます。つまり、ヒアリング段階ではまだ営業をしてはいけません。

顧客が何を求め、どのような課題を抱えているのかを正確に把握しなければ、そもそも的確な提案はできないのです。

そして、場合によっては「自社商品より他社商品の方が向いている」と感じることもあるでしょう。その場合は正直に伝えることが、むしろ信頼構築につながります。

「この営業は自分に最適なものを考えて提案してくれる」と感じてもらえれば、その場で成約しなくても、将来的な再訪問や他者紹介の可能性が高まります。

信頼を高める“マイナストーク”の効果

営業の世界では、商品の良い点だけを伝えようとしがちですが、あえてデメリットも正直に伝える「マイナストーク」は強力な信頼構築の手段です。

人はプラスの情報ばかり与えられると警戒心を持ちますが、マイナス面も含めて話すことで「この人は正直だ」と感じ、心理的な距離が一気に縮まります。

信頼関係ができれば、多少条件が合わない場合でも「次の機会にまたお願いしたい」という気持ちが生まれ、長期的な関係へと発展します。

弱点を1つ改善するだけで成績は急上昇する

売れない営業パーソンの多くは、自分の営業活動全体を“全部やり直す必要がある”と感じています。しかし実際は、6つのステップのうち1〜2か所を改善するだけで、成績が一気に伸びることがあります。

例えば、アイスブレイクのスキルを磨くだけで顧客が本音を話してくれるようになり、ヒアリングの質も自然と向上します。その結果、提案やクロージングもスムーズになり、受注率が上がるのです。

つまり、闇雲に全体を変えるのではなく、自分の弱点を正確に見極めてそこを重点的に鍛えることが、最短でトップセールスになる近道です。

営業成績アップのために今日からできること

まず、自分の営業活動を6つのステップに分解し、それぞれの工程での手応えを振り返ってみましょう。顧客との会話がスムーズに進むか、信頼を感じてもらえているか、ヒアリングで本音を引き出せているかを自己評価します。

そして、もしアイスブレイクやヒアリングに課題があると感じたら、まずそこから改善を始めてください。

信頼構築のために、顧客の利益を第一に考え、場合によっては自社商品の提案を控える勇気も持ちましょう。この積み重ねが、営業としての評価と成果を確実に押し上げてくれます。

まとめ:売れる営業は“信頼と見極め”から生まれる

営業成績を上げるために必要なのは、無理な押し売りや商品説明のスキル向上ではありません。顧客が心を開き、本音を話してくれる関係性を作ること、そしてその情報をもとに本当に最適な提案を行うことです。

営業の成果は、信頼関係と見極め力によって大きく左右されます。6つの営業ステップの中で自分の弱点を特定し、そこを重点的に改善することで、最短ルートでトップセールスへと近づくことができます。

もしあなたが今、成果が伸び悩んでいると感じているなら、まずはアイスブレイクとヒアリングを見直すことから始めてみてください。それが、売れる営業への第一歩となるはずです。