幻想に翻弄される人たち
「厚底シューズで速く走れるのは、1kmあたり5~10秒程度」
「フルマラソンなら自己ベストが約7分縮まるかもしれないが、5時間ランナーが急に3時間で走れるわけじゃないよ」
これは、プロランニングコーチの金哲彦さんの言葉です。
私はRacingthePlanetが主催する4大砂漠マラソンの完全制覇へ向けて毎日トレーニングしています。練習の一環で毎月1回、ハーフマラソンやフルマラソン、トレイルレースに出場しています。
最近10年ほど、ランニング人気はすごいもので、一役買っているのが厚底シューズです。
厚底シューズは、ランナーの「省エネ化」と「疲労軽減」を目的に開発されました。従来の薄いソールでは着地衝撃がダイレクトに足に伝わり、筋肉や関節への負担が大きく、長距離走での持久力低下を招きやすくなります。
そこで、厚く反発性の高いミッドソール素材(EVAやPEBA)と、蹴り出しを助けるカーボンプレートを組み合わせることで、着地の衝撃吸収性能を高めつつ、反発力を次の一歩に効率的に転換。結果、ランニングエコノミー(1kmあたりの酸素消費量)が向上し、同じペースでも疲労が少なく、タイム短縮につながるシューズが誕生したのです。
厚底シューズは陸上界ではものすごい技術革新で、私のような市民ランナーの中にも、カーボンプレート入りの厚底シューズを履いている人たちがたくさんいます。
でも、厚底シューズを履いたからといって、今までマラソン5時間で走っていた人が、急に3時間で走れるわけありません。
金さんは、厚底シューズはマラソンでサブフォー達成あたりから履くのがオススメだそうで、土台となる走力の乏しい市民ランナーはむしろ怪我の原因になるとのこと。
これは、ChatGPTやGeminiのような生成AIや便利なAIツールに飛びつく人たちに似ていると思いませんか?AIを何か魔法の杖のように勘違いしているのです。
確かにAIはイノベーションだし、人間の仕事のやり方を大きく変えてくれました。でも基礎知識やスキル、経験がゼロの人が、AIを手にしても、今までできなかったことが急にできるようになるわけじゃないんです。
たとえば、マーケティングやセールスライティングを大してやったことのない人が、ChatGPTを使ったとしても、現実は大して売上や利益、収入アップにはなっていません。
ビジネスモデルや戦略設計ができない人が、便利なAIツールを導入したところで、そのビジネスが急に儲かるようになるわけじゃないんです。
仕事のやり方がわからない人が、AI技術を手に入れても、AIをどう使いこなせばいいのか要領を得ず、AIに仕事をどう任せていいかもわからない。
AIが儲からないビジネスを儲かるように変えてくれるわけではないんです。
それは今後3-5年以内に急速に広まると予測されている自律型AIエージェントについても同じ。
生成AIは人間のあくまで補助だが、AIエージェントは人間を不要にする労働力となります。チャットボットやRPAとも違い、AIエージェントは自分で考え、仕事し、学び、成長し、最適化し続けてくれます。
これからの経営者は、人間を雇うか、AIエージェントを雇うか、真剣に向き合う時代が来るでしょう。
しかし仮に、AIエージェントを雇うとしても、新人研修(初期設定)は必要だし、育成(メンテナンス)の手間はかかります。人間とAIエージェントの連合チームをいかに編成し、ビジネスモデルをどのように機能させるかは、私たちがやる仕事なのです。
厚底シューズもAIも、戦闘力のないビジネスや人間に戦闘力を与えるものではなく、戦闘力のある者に翼を与えるものだという「シビアな現実」を心得ておきましょう。
もしあなたもAIエージェント時代が本格的に到来する前に、「きちんと儲かるビジネスをつくっておきたい」「年商1億〜10億サイズのスモールビジネスを構築したい」と考えているなら、書籍『事業創造マニュアル』を読んでみてください。
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