営業は本当にきつい仕事なのか?それともやり方次第で変わるのか/有限会社ピクトワークス 代表取締役 渡瀬謙

営業職は「きつい」「辛い」「しんどい」というイメージを持たれやすい職種です。

特に新卒や20代の若手が営業に配属されると、わずか数週間から数ヶ月で辞めてしまうケースも珍しくありません。

「自分は営業に向いていない」「断られるのがメンタル的に辛い」「上司に数字で詰められるのが嫌だ」と感じる人も多いでしょう。

しかし、これはあなたの能力や性格が原因とは限りません。営業が辛く感じる背景には、環境ややり方、そして最初に任される仕事の性質があります。

多くの新人営業は、まず新規開拓からスタートします。まだ顧客ゼロの状態で、いきなり飛び込み営業やテレアポといった難易度の高い仕事に挑むことになるのです。

この段階で成果が出なければ、自信を失い、辞めたくなるのは自然なことです。

新規営業が特に辛いと言われる理由

新規営業はBtoB、BtoCを問わず、多くの人が「嫌われる仕事」「避けられる仕事」と感じています。

特に飛び込み営業は、過去のやり方では「根性で訪問数をこなせ」「断られても粘れ」という精神論が主流でした。この方法は現代の若手営業には合いません。

現代では、商品や顧客の特性に合わせて最適な接点を選び、効率よく成果を上げる必要があります。

確かに、飛び込みやテレアポが最適なケースも存在しますが、その場合でもやり方は昔とは大きく異なります。

言葉の使い方、初対面での印象づくり、会話の進め方は時代に合わせて進化しており、ただ数をこなすだけのやり方では結果は出ません。

大学生アルバイトでも成果を出せた「仕組み化営業」

元リクルート営業マンで、半年間成績ゼロから全国トップになった営業トレーナー渡瀬氏は、営業がきついと感じる最大の原因は「迷い」だと語ります。

やるべき行動や話すべき言葉が明確でないまま現場に出れば、不安と迷いで行動が鈍り、結果的に成果も出ません。

渡瀬氏が過去に取り組んだ事例として、大学生アルバイトにフレッツ光の飛び込み営業を指導したケースがあります。

当時、光回線はまだ普及しておらず、BtoCの一戸建て訪問営業は非常に厳しい市場でした。

しかし渡瀬氏は、精神論ではなく方法論でアプローチしました。

まず、ピンポンを押すことへの恐怖を取り除くため、訪問時の行動をすべてマニュアル化。訪問時に起こり得るパターン(留守、子どもが対応、担当者不在など)を洗い出し、それぞれの対応方法を明文化しました。

会話は質問と確認を繰り返す形式とし、相手の反応ごとに分岐するトークスクリプトを作成。これにより、営業未経験の学生でも迷わず会話を進められるようになったのです。

結果、初日で7〜8人中3人が受注。見た目や性格で「向いていない」と思われた学生が成果を出すケースもありました。

営業のゴール設定を変えることで成果が出やすくなる

営業が辛いと感じる一因は、成果の基準を「受注」や「アポ獲得」のみに置いてしまうことです。成果指標が狭いと、結果が出なかったときにモチベーションが大きく下がります。

渡瀬氏は、評価をプロセスに広げることを推奨します。

例えば、訪問先でアポが取れなかったとしても、次回会える関係性を作れたら評価する。

さらに、まだ契約していない顧客から別の顧客を紹介してもらえたら、それはアポ獲得以上の成果として認める。

このように、成果の定義を多層的にすることで、営業活動の中に小さな成功体験を積み重ねられます。これにより、自信を失うことなく活動を継続できるのです。

営業を楽にする「迷わせない仕組み」

新人営業が挫折する大きな要因は「現場での迷い」です。「この場合はどうすればいいのか」「何を話せばいいのか」がわからないまま訪問を続けると、精神的な負担は大きくなります。

そこで重要なのが「迷わせない仕組み」です。訪問の流れ、会話の切り出し方、質問の順序、反応別の対応策をあらかじめ用意し、誰でも同じプロセスで動けるようにします。

この仕組みがあれば、入社初日や営業経験ゼロの人でも安心して行動できます。営業が得意な人は、無意識のうちにこのプロセスを自分の中に持っていますが、全員がそうではありません。

だからこそ、組織として仕組み化することが大切です。

営業スキルがキャリアと人生に与える価値

営業は決して「一生続けなければならない仕事」ではありませんが、一度身につけた営業スキルは一生の財産になります。社内での立ち位置が向上し、異動や昇進のチャンスが広がります。

転職市場でも営業経験者は需要が高く、自らビジネスを始める際にも役立ちます。営業力があれば、アイデアや商品を人に伝え、納得してもらい、行動してもらうことができます。

これは企業だけでなく、個人の人生においても非常に重要な能力です。

「営業は辛いからやらない」ではなく、「営業のやり方を変えて楽に成果を出す」方法を身につけることが、キャリアの選択肢を大きく広げます。

まとめ:営業はやり方次第で辛さが減り、成果が上がる

営業が辛いと感じるのは、あなたの性格や能力の問題ではなく、多くの場合は環境ややり方の問題です。

特に新人時代に新規開拓から始める場合、迷いと不安が大きなストレスとなり、結果が出る前に辞めたくなります。

しかし、訪問や会話のプロセスを仕組み化し、成果指標を多層化すれば、営業はぐっと楽になります。

そして、営業力は将来のキャリアや人生の可能性を広げる強力な武器です。「営業はきつい、辛い」というイメージを持っている人こそ、方法論と仕組み化でその印象を変えてほしいのです。

営業は、正しいやり方さえ知れば、楽しく、やりがいのある仕事に変わります。

【新刊本】AIエージェント営業術:最少の社員数で年商10億ビジネスをつくるBtoB×AI自動セールスマシン構築法 (Sales Engine)

ご注文はこちら ●人間に代わる超優秀な頭脳・労働力をどう活かすか●技術知識ゼロの非エンジニアでも基礎からわかる●最少の社員数・働く時間で業績を伸ばす新・売れる仕組…