ボタニスト、躍進の秘密!D2Cビジネスに学ぶ、儲かる事業のつくり方

I-ne(アイエヌイー)という会社をご存じでしょうか?

大阪市北区にある、東証グロースに上場している会社です。2021年12月期で連結売上は283億円。消費者に直接商品を売るD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)を2000年代から取り入れていた草分けの一社としても知られています。最近では、中国をはじめアジア市場への拡大にも積極的です。

売上の約50%を占めるのが、人気のシャンプーブランド「ボタニスト」。2015年に投入した中価格帯のデザイン性を重視した商品であり、海外で流行し始めていた”ボタニカル”な成分を取り入れています。ボタニカルとは、植物性や植物由来という意味。ボタニストというネーミングは、秀逸ですね。

I-ne社やボタニストの躍進を調べてみると、私たちも応用できるビジネス成長のヒントを3つ見つけたので、シェアしたいと思います。

(1)商品開発期間、3分の1

大手メーカーでは商品アイデア発案から実際に販売されるまでに、2〜3年はかかります。一方、I-ne社では、1年以内に商品を発売します。

ボタニストは2015年に投入された商品ですが、アイデアから8ヶ月で発売に至りました。

やはり中小企業、ベンチャー企業が生き残るために、成長し続けるためには、最後はスピード勝負ですね。経営資源豊富な大手がゆっくりのんびりやっている間に、さっさと商品を開発して、販売しましょう。

拙著『事業復活メソッド』にも書きましたが、”他社が90日でやることを1日でやるには?”という発想で、どうすればスピードUPできるのかを考えましょう。

(2)2段階テストマーケティング

もちろん市場へ投入した商品がすべて売れるわけではありません。ポイントは、テストマーケティングです。

実際の商品を小ロットで作り、小予算で売り始めるというテストマーケが一般的です。でも、実際の商品を作る前に、影も形も何もない状態でテストマーケティングする方法もあるんですよ。

企画コンセプト段階で売れるかどうかを確認する手法を「ドライテスト」と言います。ドライテストは、そもそも商品の企画段階で脈アリなのか、見込みなしなのかを図るために有効です。

つまり、テストマーケティングには2段階あるということですね。企画段階ではドライテスト、開発段階では一般的なテストマーケ。

見るべき数字は、顧客獲得コストであるCPO(コスト・パー・オーダー)やCPA(コスト・パー・アクイジション)に対して、初回注文から180日や360日の間にいくら粗利を稼いでくれるのかをLTV(ライフ・タイム・バリュー)が見合うかどうかです。

これらはI-ne社だけでなく、D2CだけでもBtoCだけでもありません。すべてのビジネスに共通する段階の踏み方であり、追うべき数字です。

(3)リピート予測モデル

I-ne社のボタニストのような単品リピート通販では、LTVが読みやすいのが特長です。

一定の間隔で自動的に商品が届く定期購入モデルであり、毎月の顧客継続率は何%か、初回注文から経過日数ごとの解約率推移など、勘や憶測ではなく、データ分析に基づいたPDCAをまわすことができます。

今後の数ヶ月や1年先の売上や利益、商品在庫数も予測できます。計画以上に製造する必要はありません。

定期購入などのサブスクモデルでなくとも、リピート性がある商品サービスであれば、数値計測・記録をしていけば、業績予測や需要予測はどんな会社でも可能です。

未来が読めるなら、経営も安心ですね。

今日取り上げた3つのポイントは、どれも基本的なものばかりですが、案外できていないと思いませんか?

たとえば、「中小企業はスピード勝負なんて、もう知ってる!」と思われたかもしれません。でも、実際に自分の会社で実行できているでしょうか?仕組み化されているでしょうか?

テストマーケティングやリピート予測についても、たとえば、自社のマーケティングにまつわる数字を問われて、正確なスコアを社員全員が即答できるくらい明らかになっているでしょうか?社長だけでなく、チームメンバーに至るまで浸透しているでしょうか?

人気シャンプーブランドのボタニスト。躍進の秘密は、魔法や奇策ではなく、教科書通りの基礎基本を徹底する仕組みをつくったことだと私は感じました。あなたはどう思いますか?