大物からの紹介は最強、でも…

「お客様からの紹介は最強、でも...」
いまではかなり限定的ですが、私は30歳前後の頃、沖縄の経済界のドンとも言える大物の手足となって、仕事を受けていた時期がありました。
彼は沖縄をはじめとする中小企業経営者ネットワークの中心的人物でした。
彼自身は損害保険代理店が屋台骨でしたが、次々とビジネスチャンスを見つけては法人を立ち上げて新規事業を始める連続起業家でもありました。資金も人脈も、ビジネスチャンスを惹き寄せる天才的な感覚の持ち主でした。
現在では、30名弱のメンバーとともに自社事業の運営に比重を移しているため、私自身がハンズオンで他社の実務代行を請け負うことは、ほとんどありません。
しかし当時は、熱心にお誘いやお声がけをいただけるほど信頼してもらっていました。新たなビジネスを立ち上げる時には決まって私が呼ばれました。
新規ビジネスを始めるタイミングは、誰にとっても潤沢な資金はないし、ビジネスが始まってもいないのに無闇に資金を使えない。予算が限られている中、数多くの業者や外注、人材を雇う余裕はありません。
そんな時、彼にとって私は、とても都合がよい存在だったのです。
なぜなら、私には売れる仕組みづくりの知識やスキル、ノウハウがあったため、私一人を初期メンバーとしてとりあえず参加させておけば、ビジネス初期段階に必要なことを一手に任せることができます。
あちこちの業者や外注を手配する必要もないし、正社員で雇用する必要もありません。彼にとって新規事業リスクを抑えられることもメリットでした。
私は彼の10以上の新規事業にマーケターとして呼ばれ、売れる仕組みごとに固定の業務委託費を払ってくれました。値引き割引も一切なく、です。
人脈豊富な彼の周囲には、きっとたくさんの優れたマーケティング会社や広告代理店がいたことでしょう。部分断片を担えるプロたちは大勢いたはずです。
しかし、新規ビジネスの立ち上げ段階で売れる仕組みづくりを丸ごと任せられるという点では、彼には私しかいませんでした。彼の頭の中で、私はオンリーワンになれたのです。
さらに、私がお願いをしなくても、彼は自分の人脈やお客に勝手に私を売り込んでくれました。紹介手数料も宣伝料もなにもありません。彼にとっての見返りは一切ないように思えました。
しかし、それでも「村上さんは一生懸命やってくれてるから、応援したくなるんだよね」と言って、どんどん知り合いの経営者やクライアント候補企業を紹介してくれました。
大物からの紹介は、最強です。信頼関係がすでに確立されているので、値引き要求もないし、すぐに話が決まります。継続率も高い。
長年の蓄積してきた信頼と豊富な人脈から、こちらからお願いや依頼をしなくても、次々に新しい仕事やクライアント、顧客の紹介が発生するサイクルをつくれたら、本当に心強いですよね?
でも、私の経験上、1つだけ注意点もあります。
紹介が次々と出ると、紹介だけで十分と考えがちですが、いつでもそう都合よく事が運ぶわけではないことは、覚えておきましょうね。
紹介は良くも悪くもコントロールが効きにくいですから。