ベネッセに学ぶ「6マスマーケティング」の全貌と小さな会社への応用法/FunTre株式会社 代表取締役 谷田部敦

ベネッセコーポレーションといえば、「しまじろう」でおなじみの通信教育や教材サービスを展開する大手企業として知られています。

実はこのベネッセが10年以上にわたり運用している「売れる仕組み」には、ほとんどの中小企業や個人事業主が見落としている収益チャンスが隠されています。

それが「6マスマーケティング」という考え方です。

このマーケティング手法は、美容院や保育園の経営支援から地域活性化プロジェクト、大学の起業家教育まで幅広く実績を持つマーケティングDX専門家・谷田部氏によって体系化されたもの。

この記事では、この6マスマーケティングの全貌を解説しながら、小さな会社や店舗でも今日から実践できる方法を具体的にお伝えします。

6マスマーケティングとは何か

6マスマーケティングは、顧客が自社の商品やサービスを知り、購入し、リピートしてくれるまでのプロセスを6つの段階に分け、それぞれのマスを順番に埋めていく考え方です。

最初の1マスは「認知」。まずはターゲットに自社や商品を知ってもらわなければ、購入は始まりません。

次の2マス目は「獲得」。見込み客と接点を持ち、連絡手段や情報を取得するフェーズです。

3マス目は「信頼関係」。接触頻度を高め、競合の中から自社を選んでもらえる関係性を築きます。

4マス目は「フロント商品」。お試しや体験、低価格のサービスで初回取引を生む段階です。

5マス目は「メイン商品」。自社が最も売りたい主力商品や、長期的に利用してもらえるサブスクリプション型サービスを提供します。

そして6マス目が「リピート・紹介」。一度購入した顧客が継続して利用したり、新規顧客を紹介してくれる状態です。

このサイクルが回ることで、再び認知のマスへとつながり、継続的な売上を生み出します。

なぜ多くの企業はこの仕組みを活用できていないのか

多くの企業や店舗は「買う人」と「買わない人」という単純な二分法で見込み客を捉えてしまいます。しかし、実際には「まだ買う準備ができていないが将来顧客になり得る人」が多数存在します。

これらの人々に対していきなりメイン商品を売り込むと、強い拒否反応を招きます。現代の消費者は売り込みに敏感で、営業色の強いメッセージは無視されやすいのです。

そのため、最初は売り込むのではなく、有益な情報や価値あるコンテンツを提供し「ありがとう」と思ってもらう接触を重ねることが重要です。

谷田部氏が自身の起業初期に行ったメールマガジンの毎日配信はその好例で、読者が数十人の頃から継続した結果、1年で3,000人以上の登録者を獲得しました。

このように「信頼資産」を積み上げてから販売に移る方が、成約率は格段に高まります。

ベネッセが実践する6マスの流れ

ベネッセの「しまじろう」戦略は、この6マスマーケティングの教科書のような事例です。

まず認知の段階では、テレビ番組やDVD、イベントを通じて子どもと保護者にキャラクターを知ってもらいます。

次に獲得の段階では、例えば水族館イベントで「ぬいぐるみプレゼント」と称し、住所や連絡先を登録してもらいます。

続く信頼関係フェーズでは、毎月のDMや小冊子、おもちゃの同梱などで接触頻度を高め、保護者の記憶に残ります。

フロント商品は1ヶ月お試し教材。気軽に試せる低リスクのオファーで初回購入を促します。

その後、メイン商品である定期購読型の通信教育へと移行させ、最後に長期利用や兄弟姉妹への拡大、紹介制度でリピート・紹介を促進します。

この流れを通じて、顧客は長期間ブランドに接触し続けることになります。

信頼関係構築のポイント

信頼関係を築く際に重要なのは「機械的にならないこと」です。企業が発信するメルマガやLINEは、どうしても事務的になりがちですが、そこに人間味を加えるだけで反応が変わります。

たとえば担当者の名前や日常の一言を添えるだけで距離感が縮まります。もし実在の人物を前面に出すことに抵抗がある場合は、仮想キャラクターを作る方法も有効です。

大手電力会社が行った「でんこちゃん」という架空の人物によるメルマガ配信は、無機質な企業からの連絡よりも親近感を生み、見積もり依頼数を増やしました。

また、接触頻度の重要性も忘れてはいけません。深く1回話すより、短時間でも毎日接触する方が信頼は高まりやすいという「おばあちゃん理論」は、顧客接点の設計において参考になります。

タイミングを逃さないための接触戦略

見込み客が商品を購入するかどうかは、多くの場合「企業側のタイミング」ではなく「顧客側のタイミング」で決まります。そのため、定期的に接触を続け、相手の記憶に残り続けることが重要です。

メルマガの開封率が低くても気にする必要はありません。重要なのは、相手が必要性を感じたときに真っ先に思い出してもらえるポジションを取っているかどうかです。

ベネッセのDMが届き続ける中で、ある日保護者が「そろそろ通信教育を始めようかな」と思った瞬間に行動につながるのは、継続的な接触の成果です。

この「思い出されるポジション」を確保することこそが、成約率向上の鍵です。

小さな会社が今日から始められる実践方法

6マスマーケティングは大企業だけのものではありません。たとえば地域の美容院なら、まずSNS広告や地域イベントで認知を拡大します。来店時やイベント参加時にLINE登録を促し、見込み客を獲得します。

その後はヘアケアのアドバイスやクーポンを定期配信し、信頼関係を築きます。

低価格のトリートメントやヘッドスパをフロント商品に設定し、体験からメイン商品であるカットやカラーの長期契約へとつなげます。

最後にポイントカードや紹介割引でリピートと紹介を促進します。この流れを地道に回し続けることで、売上の安定化と顧客基盤の強化が可能になります。

まとめ:6マスを埋めて回すことが売上を安定させる

ベネッセの事例に見るように、6マスマーケティングは「認知→獲得→信頼関係→フロント商品→メイン商品→リピート・紹介」という一連の流れを構築し、それを継続的に回すことで売上を安定させる仕組みです。

重要なのは、いきなり売り込まず、価値提供と接触頻度で信頼資産を積み上げること。そして顧客のタイミングに合わせて購入を促すポジションを取り続けることです。

小さな会社や個人事業でも、SNSやメール、イベントを組み合わせれば、この仕組みを十分に活用できます。今日からできる小さな一歩を積み重ね、6つのマスを埋めていきましょう。

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