東南アジア輸出で売れる商品・売れない商品/貿易事業サポートセンター株式会社 代表取締役 氣仙隆造

近年、日本企業の海外進出先として東南アジアがますます注目を集めています。その中でも特に輸出案件が増えている国として、ベトナム、インドネシア、マレーシアの3カ国が挙げられます。

これらの国は経済成長が著しく、中間層の拡大や購買力の向上によって、日本製品への需要が高まっています。

一方で、従来は欧米進出を目指す企業が多く、フランスやアメリカへの輸出も引き続き人気があります。

たとえば最近では、国内で靴やサンダルを製造するメーカーがアメリカ市場に参入するケースもあり、現地市場に合わせた販売支援が行われています。

東南アジア市場は距離的にも近く、文化的な親和性も高いため、中小企業にとっても比較的参入しやすい一方で、国ごとの規制や商習慣を理解した上での戦略構築が欠かせません。

輸出が難航した事例とその理由

海外輸出には成功例だけでなく、うまくいかなかったケースも存在します。特に規制が厳しい分野は進出のハードルが高く、医療機器や特定の美容・食品分野は注意が必要です。

例えば、家庭用治療機器をタイやマレーシアに輸出しようとした事例では、現地政府からの許可取得が必要でしたが、これまで前例がなく、現地コンサルティング会社に確認しても許可取得に1〜2年かかる可能性があると判明しました。

許可を取るための時間的コストや、現地代理店に発生する負担は大きく、結果的に進出を断念せざるを得ませんでした。

食品や化粧品でもFDA(食品医薬品局)の認可が必要であり、その審査は成分検査や安全基準のクリアなど、長期間かつ高コストになることがあります。

こうした規制分野では、事前の法規制リサーチと、現地での前例確認が極めて重要です。

輸出成功の定番「ジャパンブランド」

一方で、日本製品ならではの品質やブランド力が評価され、成功した事例も多数あります。特に、日本で生産されること自体に価値がある商材は海外市場でも根強い人気を誇ります。

代表例としては抹茶、日本酒、陶器といった伝統的な製品があり、欧米やアジア各国で安定した需要があります。また、意外な分野でも日本の技術力が高く評価されるケースがあります。

例えば、産業用の上水機をマレーシアの展示会で紹介した際、現地企業から「中国や韓国にも類似品はあるが、日本製は技術面で比較にならない」と評価されました。

こうした例からも分かるように、日本製品は見た目が似ていても、性能や耐久性、安全性の面で差別化されることが多く、それが購入の決め手となります。

東南アジアでのキッチン用品輸出の成功例

実際に成功を収めた具体例として、包丁やまな板などのキッチン用品をタイ市場に展開したケースがあります。

この場合、現地には中国や韓国製の安価な包丁が流通していましたが、一定層の消費者は「長持ちし、安全で品質が高い製品」を求めており、日本製品が選ばれました。

現地販売代理店との契約交渉の際には、顧客層の特性を確認することが重要です。

例えば、低価格品を好む層が中心の販売網では、日本製品の価値を理解してもらいにくく、価格競争に巻き込まれがちです。

逆に、品質重視の層をターゲットとする販売代理店であれば、ジャパンブランドの魅力を最大限に発揮できます。このように、輸出先市場の顧客層に合わせたパートナー選びが成功の鍵を握ります。

テストマーケティングで市場性を見極める方法

本格的な販路開拓や営業活動を始める前に、現地市場でのニーズを確認する「テストマーケティング」は有効です。

方法の一つとして、東南アジアやアメリカで定期的に開催される「ジャパンフェア」などのイベントに出展するやり方があります。

短期間で現地消費者やバイヤーの反応を直接得られるため、需要予測や販売戦略の策定に役立ちます。

さらにコストを抑えたい場合は、現地の販売代理店や店舗に一部スペースを借り、委託販売や出来高払い方式で商品を置かせてもらう方法も有効です。

この方式なら、相手側に大きなリスクを負わせず、現地のリアルな販売データを得られます。信頼できる現地パートナーや支援企業と組むことで、スムーズな市場参入が可能になり、時間とコストの削減にもつながります。

海外輸出における戦略的な考え方

海外輸出では、必ずしも日本国内でのトップセラー商品である必要はありません。むしろ現地市場では「日本製であること」自体が強い差別化要因となり、 niche(ニッチ)市場で高く評価される可能性があります。

重要なのは、自社製品がどの市場でどのような顧客層に響くのかを正しく見極め、そのターゲットに向けて効果的な販売網を構築することです。

そのためには、現地規制の事前調査、顧客層の特定、信頼できる代理店との提携、テストマーケティングを通じた需要検証が欠かせません。

東南アジアをはじめとする新興市場は、購買力の向上とともに日本製品への関心が高まっており、戦略次第で大きな成長が見込めます。

ジャパンブランドの価値を最大限に活かし、適切なパートナーと組んで確実に市場を切り開くことが、これからの海外輸出成功の鍵となるでしょう。

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